Contract love ～偽装恋愛～ 15 (ページ35)

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紫耀side ベランダページ35

仕事でAが家を出た後であろう時間に家に帰った。
俺は今日の仕事は夕方から。
それまで、
とにかく考えなければ。
冷静になって、
記憶を辿っていくしかない。
でも、
今朝の状況は紛れもない事実なわけで…

隠して何もなかったフリして過ごして行く？
そんな器用に隠していけるのか？
昨日はどこに泊まったの？と聞かれたら？
もう、色々考え過ぎて
頭がパンクしそうだった。

ソファーで頭を抱えていた顔を上げて、
見渡す部屋の中には、
Aとの日常が溢れている。

Aがベランダへ出る時にいつも手にする毛布。
手を伸ばしそれを取ると、
大好きなAの匂いがした。
Aをこんなにも愛してるのに、
俺はなんて事をしたんだ…
罪悪感と後悔で涙が止まらない。
話を聞くのが嫌で、
逃げるために
飲みに行くなんて
そんなことしなければ良かった。
でも、
あの曲ばかり歌うAは嫌なんだよ…
あの歌を歌うタクさんには、
やっぱりもう会って欲しくないんだよ…
自分の事は棚に上げて、
そんな事を考えてしまう。

ここ数日のAに対する態度を思い返して、
今朝の事を思い出して、
俺は…
俺なんかが、Aのそばにいる事が許されるのか？
そう考えだすと、
自信がなくなってしまった…

どうにか仕事を終え、
恐る恐る帰ると、
真っ暗な部屋。

どこに行ったんだろう。
岸君に確認すると、
もう2時間も前に帰ったと言うし。
何度Aに電話しても出ない…
どこ行ったんだよ。
いくら待っても全然帰ってこない…

あそこかも…

そう思い立った俺は急いで隣の部屋に向かった。

隣のAの部屋に入ると、
電気が付いていた。
やっぱりここだったんだね。
そして、真っ直ぐにベランダへ。

居た…

その後ろ姿が、
何故だかとても悲しかった。
そして、俺に気付いて振り向いた表情は、
初めて会ったあの日のAのように、
泣きそうに笑う表情だった…
その表情で、
あー、無理なんだな…
何だかもう疲れた…
俺はそう思ってしまったんだ…