ホントのホント… ページ2
普通に、
ワインを選び、
普通に
レジへ並び、
今は、
デパートを出て、
駐車場まで歩いている私達。
紫耀「アハハ！顔、まだ怖いよ？」
横から私の顔を覗き込んでそんな事を。
A「えっ？」
頬に手を当てて、横を歩く紫耀を見上げると、
紫耀「大丈夫だったでしょ？意外とみんな人の事なんて見てないし、気にもしてないんだよ。だから、普通にしてれば、バレないんだよ。」
A「そうなんだね。」
紫耀「そっ！だから、また行こうね？」
A「お断りします。」
被せ気味にそう言う私に、
紫耀「アハハ！フラれたー。今日は凄くS強めな日だね。じゃあ、夜もその調子で…。あー、楽しみだなー。俺、襲われちゃう？ね？攻められちゃう？縛っちゃったりする？」
こんな大通りで、
こんなスーパースターが、
こんな話をしているなんて、
誰も思いもしないだろう。
私は、
相手にしないと決め、
終始無言を貫いた。
紫耀「無視すんのも、プレーなの？」
A「うるさい。早く乗って。」
紫耀「アハハ！はーい！」
私も車に乗り込むと、
ご機嫌な紫耀とは対照的に、
どっと疲れが押し寄せ、
ため息が出た。
紫耀「ごめんね？ついて行ったりして。」
A「もういいよ。バレなかったし。」
紫耀「それと、指輪の事も…。大丈夫？本当にごめんね。」
A「指輪の事？私は大丈夫だって。」
振り向いて、
笑顔でそう言った私に、
紫耀「本当に？」
悲しそうな顔でそんな事を…
あー、ダメだ。
正直に言おう。
きっとバレてる。
A「ホントのホントは…」
紫耀「うん。」
A「悲しかった。たかが指輪だって、あの場ではそう思ったし、言ったけど、ホントのホントは…、やっぱり悲しかった。今も指輪のないこの薬指が…。」
そう言って、
右手を前にかざして、
指輪のない薬指を見つめた。
紫耀「ねぇA？こっちおいで？」
後ろからそう言われ、
素直に
後部座席へ移動した。
紫耀の隣に座ると、
直ぐに右手を取られ、
薬指を親指で撫でられた。
指輪がなく、
寂しくなった指の違和感も、
心の奥底で悲しかった思いも、
それを紫耀が引き出してくれたと言う事に、
我慢が出来なかった。
自分から紫耀に抱き着くと、
すぐに力強く抱き締めてくれた。
心が満たされていくのを感じた。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2019年11月24日 0時
