でも…触れたい… ページ27
「いや、違う。あえて呼ばないようにしてる感じがする。すごくする！！」
鋭いな…
これは、この場だけ言ってあげれば気が済むのか？
よーし、この5年間の私を見せてやろうじゃないの。
体をそっと平野君の方に向けて、膝を当てて、太ももに手をそっと乗せるタイミングで、
「…紫耀？…これでいい？」
目を見て微笑み、名前を呼んだ。
「……。何者？…ヤバいんだけど…。」
ほらね…。
5年間これで生きてきたんだから。
さっと離れて、
「喉渇かない？何か飲む？」
「……ううん。要らない…」
まだ、帰って来れてないな。笑
お水でも取りに行こうして、立ち上がろうとした時、
「待って。」
腕を掴まれ、座らせられた。
「どうかした？」
「ねぇ、今から嘘は無しで正直に答えて。」
「分かった。」
「…俺の他にも、俺との事みたいにこんな関係の人がいるの？それか、過去にいたとか…」
「いないよ？過去にもいないし。こんな変な生活初めてだよ。」
「そっか。良かった。」
それが気になったのね。
お水を取りにキッチンへ行き、また戻った。
で、平野君の座る反対側に座った。
「…何で？何で離れるの？」
何でと言われても…
「逆に近付く理由がないから？」
「…どうしたら、近付ける？Aに近付くにはどうしたらいいの？」
何でそんな切なそうな顔で言うの？
あなたから壁を作ったのに、ずるいよ。
「…近付きたいの？」
「うん。近付きたい。」
壁を壊すって事？
今更？
「近付いて何するの？…話なら、近付く必要ないじゃない…」
あなたが近付きたいのは、私の心の方？
それとも、体？
「うん。今日はちゃんと話しがしたい。Aを教えて欲しい。…でも…触れたい…」
その言葉が堪らなく嬉しかった。
私はあなたに本気になってしまうんだろうな…
契約違反…
もう、手遅れな気がしてる。
好きなんだ。私は最初から…
何も言わず、
黙ったまま見つめる私の傍に来て、横に座った。
そっと、私の頬に触れ、そのまま首元へ手が周り、
引き寄せられるように、唇を重ねた。
やっぱり…、あなたが好き。
確信に変わった…
お互い、探るように、ぎこちなく、
少し遠慮がちに唇を重ねていたけど、
段々とお互いを、もっと、もっと感じたい。
そんなキスに変わった。
深くなるキス。
いつの間にか、私の腰には手が回され、
強く抱き締められていた。
私も彼の首に腕を回していた。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
