よく分からない人 ページ15
「はぁ…。年上の女の余裕ってやつ？」
ソファーに力なく座り、軽く睨みながら、私を見上げてくる。
「そんなんじゃないよ。笑」
「クソー…」
クッションを抱き締めて、言っている。
「フフフ。笑」
「笑わないで…」
また、チラッと私を見上げてそう言ってくる。
「可愛いね？」
これは本心。
カッコイイ顔なのに、行動は可愛いんだね。
「だぁー！！！なんなんもー…」
またソファーのクッションに顔を埋めてる。
じたばた忙しいな…
「また来てくれる？」
ソファーの下に座って、正面から言った。
「…うん。来る…」
顔だけこっちに向けて、そう答えた平野君。
「待ってるね？」
「うん。」
玄関まで見送る。
「おやすみなさい」
「おやすみ…。あんさ、あー…。いや、いい。」
「フフ。何それ。笑」
「いや、あー…。いや、やっぱいいや。」
何か言いたいことがあるんだろうか…
言いにくいってことは、また一線を引くような言葉なのかな。
連日聞くのはキツイな…
もう、このドアを閉めよう。
「おやすみなさい。」
ドアを引いて閉めようとすると、
「待って、待って！気にならないの？」
「何が？」
「俺、何か言いかけたじゃん！何の話かなーって、気にならないの？」
何なんだ？子どもだな…
「別に？じゃあ。」
ニッコリと得意の笑顔を作り、そう言ってドアを閉めた。
「フゥーっ…。」
よく分からない人だな…
そう言えば、社長さんも言ってたもんな。
テーブルに残されたコップに目をやる。
さっきまで、確かにそこに居たんだよね…
コップを流しに持って行き、洗う。
何だか、平野君の香りが残っているような気がして、窓を開けて新鮮な空気を入れた。
どうして、こんなにも彼がここに居たことを消したいのか、今のこの行動の理由を自分でもよく分からない。
ただ、どうしても、彼の痕跡を消しさりたいとしか頭になかった。
窓を開けたまま、足だけベランダに出して座り、
今日アパートから持って来た、お気に入りのボア毛布に包まって、ボーッと夜空を見ていた。
またあの歌手の歌を口ずさみながら…
ピンポーン。
ん？
ピンポーン。
ピンポーン。
……。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン。
えっ？何？
連打？
恐る恐るインターホンを見ると、カメラに映る平野君。
「はい。」
忘れ物？いや、何も無かったけど…
「開けて。」
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
