私のような夜空 ページ1
今日も夜空を見上げ、見えもしない星を探す。
この大都会の夜空で、満天の星空を夢見る私はバカなのかな…
こんな風だからダメなのかな…
ため息が夜空へ…
携帯が鳴っている。
「はい。」
「Aさん？」
「はい。その後どうなりましたか？」
「全て完了しました。しかし、本当にこれで良かったんですか？」
「はい。これまで色々とありがとうございました。」
「いえ。…東京ですか？」
「そうですね。ここでしか生きられませんから…」
「そうですか…。やはりこの事、皆さんには…」
「それは、約束通り言わないで下さい。お願いします。…すみません、そろそろ行かなきゃいけなくて…」
「あっ、分かりました。では…」
無理やり電話を終わらせた。
全てが上手く行ったなら、それでいいの。
見上げた夜空には、やっぱり星なんて見えない。
ここでは、夜なのに、夜空が暗くない。
どんよりとして、スモークがかかったような夜空が広がっている。
まるで、私のような空…
未来に希望も見れない、どんよりとした毎日。
いつも、この大都会の夜空を見上げては、仲間を見つけたような気で、夜空を見上げているのかもしれない…
そろそろ行かなきゃな…
「よし！今日も頑張ろ！」
自分に喝を入れ、完璧に作られた笑顔を携え、仕事へ向かう。
銀座の高級クラブ。
ここが私の職場。
「おはようございます。」
板についてしまった、最高の作り笑顔。
もう、本当の笑顔なんて忘れてしまった。
「あっ、Aさん。おはようございます。」
開店し、お客様を迎える。
いつもの様に、作られた笑顔を絶やさず、やり過ごすだけ。
今日もそんな一日が始まるんだ。
「Aさん、お願いします。」
「はい。」
指名されたテーブルに付く。
「いらっしゃいませ。」
「今日も会いに来たよー。」
最近よく指名して下さる、ある会社の社長さん。
若くして成功された、やり手の方。
「ありがとうございます。嬉しい。」
お酒を作り、そっと差し出す。
「その、笑顔が見たくてね。」
こんな作り笑顔でいいんなら、いくらでもどうぞ。
心の中ではそんな事を思いながら、
「嬉しい…。じゃあ、明日もまた私の笑顔を見に来て下さるのね？」
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
