生まれ変わったこの世界で

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蝉







日下「ねぇ」

「なんだ」







ミミクリー・マンイーターに毒を突き刺しながら日下瑛二は話し始める







日下「…蝉は、本名知りたくないの？」

「は？」

日下「パカなら…知ってるかもよ」

「…別に今更知ったって意味ねぇだろ」

日下「それは蝉が死んでるから？」

「…っ！？」

日下「…そっか、蝉も死んでるんだね」

「『蝉も』ってことはもしかして…」

日下「うん。俺も死んでる」







日下瑛二の方を見ると、彼は俺にニコッと笑って見せた

そして、次に放たれた言葉に俺は何も言えなくなる







日下「俺、母さんに殺されたんだ」

「え…」

日下「背中にグザッと。思ったより痛かったな〜」

「…」

日下「蝉はどうして死んだの？」

「俺は…ビルから飛び降りた」

日下「それって…」

「違う。俺の…大切な人を殺したやつと一緒に飛び降りたんだ」

日下「へぇ…そう」







自分から聞いたくせに、興味なさげに頷く日下瑛二

そんな日下瑛二の表情は、どこか悲しげな…悔しげな…そんな表情







日下「俺の本名もパカは知ってんのかな？」

「…さあな」

日下「…でも俺は日下瑛二なのに」

「…」

日下「俺って…何なんだろ」

「…お前は、日下瑛二。それ以外何物でもない」

日下「…例えそれが偽名でも？」

「俺だって言ってしまえば偽名だ。
だけど俺は“蝉”であって、日下瑛二でもカイでもない」

日下「…何が言いたいの？」

「名前なんて関係ない。俺は俺でお前はお前。
生きていればそれでいいんだよ」

日下「何それ」

「…って、言ってた」







もう、俺と同じでこの世にはいないけど

俺の…1番大切な人が

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