My Funny Valentine

MY FUNNY BABE 　たつとりゅう1 ページ1

忙しいスケジュール。
ドラマの収録が終盤戦になった隆平と
映画の撮影がスタートした俺。

今日は珍しくのんびりとした時間をもらってる。

さっきまで雛ちゃんが鍋つつきに来てた。
よかーまくんがお迎えに来て帰っていったけど
最近あの二人、よくうちにおるわ。
まぁ、下の階降りてくるだけになったし
ご飯食べるのは大勢のほうが楽しいもんな。

ふたりきりになって静かになった部屋。
風呂も入って、のんびりとした時間。
ゴロンとラグの上に寝転がって台本読む俺の横で
隆平はタブレットの漫画に夢中。
なぁんも言葉交わさなくてもええねん。
隣にいてくれるだけで安らぐ。
他のことやってても繋がってる感じ。
TVも消したまんま。
俺がページめくる音と、時々漏れる隆平の笑い声。

思い出したように立ち上がった隆平が
キッチンでゴソゴソし始めた。
何してはるんやろ。
小腹でも減ったんかいな。あんだけ食べたんに。
特別気にせんとまた台本に目を落とす。

｢はい。どうぞ｣
コトリとテーブルに置かれた湯呑みからは緑茶のええ匂い。
｢休憩しましょ｣
差し出されたのは菓子皿に乗った豆大福。

｢わぁ。うまそう！買ってきてくれたん？｣
｢おん。チョコよりこっちのほうが好きやろ？｣

せやった。今日バレンタインやもんな。
一時期俺が豆大福好きやって言うたら
仕事で一緒になるたんびにお供えみたいに
俺の定位置に置いてくれるようになった。
あん時、気にかけてくれるんがメッチャ嬉しかったなぁ。
しばらく続いたんで飽きてしまったけど。

いただきますって手ぇパチンとして
ふたりで同時にかぶりつく。

｢｢うまっ｣｣

思わず声が揃った。

｢口のまわり粉だらけやん｣
｢たつもな｣

お互いの顔見合わせてゲラゲラ腹抱えて笑う。
真っ白な髭。
にんにくみたいな鼻。
くしゃくしゃに皴よせて思いっきり笑う隆平。
ブスやなぁってみんなは言うやろぉけど
この笑い顔が堪らなく好きや。

ホンマ、うちの子かわええ。
愛しくて愛しくて見つめてたら、
手で口のまわり拭った隆平が真面目な顔して

｢なぁ、まだまだ俺の知らんことある？｣

って俺を見つめ返した。

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