恋 彼らのお話2

可愛い子　きみたか2 ページ37

｢わっ｣

ガタンという音とマルの大きな声。

｢どした？｣

バタバタとキッチン行ったら右手押さえてる。

｢片付けようとしたら、まだフライパン熱かったぁ｣
｢ええから、冷やさんとっ｣

水出しっぱなしにして取り敢えず冷やす。
ベーシストの大事な手ぇやで。
何かあったら、と思うと気が焦る。

｢ゆうちん、ごめぇん｣

シュンとした顔で俺に謝るマル。

｢アホ。俺に謝ることないやろ。痛ないか？｣
｢大丈夫。ちょっと触ってしもただけやし｣
｢跡に響かんとええけど｣
｢ん。そこまでやないと思う｣
｢ちゃんと冷やさな｣
｢このままだと、ゆうちんの手まで冷えてしまやないの｣
咄嗟にマルの手ぇ掴んでそのまま水当ててた。
｢そんなん、気にせんでええ｣
こんな時でも人のことばっかりや。

｢だいぶ落ち着いてきたし大丈夫やで｣
保冷剤当てとくしな。ってマルが水止めたから
近くにあったタオルでポンポンと軽く手ぇ拭いてやる。

｢ゆうちんはいっつも優しいんやから｣
｢驚いただけやわ。
留守の間になんかあったら一緒におった俺が怒られるやん｣
・・・おーくらと信五に。

冷凍庫から保冷剤出してマルに渡すと

｢ありがと、ゆうちん｣

ちゅっ。

ほっぺたにキスしてきやがった。

｢おい！こらっ。アカンやろっ｣
俺が慌てると
｢えー。ええやん。減るもんやないしぃ｣
ゆうちん、真っ赤！ってケラケラ笑っとる。

・・・。まったくコイツは。

悔しいから後頭部引き寄せて

ちゅぅぅ

くちびるに１発かましてやった。

なぁんの色気もない。ジャレついただけ。
・・・。
まぁ、やましい気持ちが1ミリもないって言ったら
嘘になるけど。


｢んーっ！もうっ、ゆうちんっ｣
今度はマルが真っ赤になる番。

うははは。俺の勝ち！

｢あっ、餃子冷めちゃう｣
｢せやな。食べよ、食べよ｣
｢右手使えへんから、ゆうちん食べさせてぇ｣
｢甘えんな、アホ｣

とかなんとか言いながら
結局食べさせてやるんやけどな。

可愛いマル。
俺の大事な子。特別な可愛い子。
信五がヤキモチ妬くからあんまり考えんとこ。

リビングに戻って座ると

｢ゆうちん、あーん｣

口開けてアホ面しとる。
もっかいちゅうしたろかな。

｢あーん、て｣

はいはい。待ってろ。
アホ面もまた可愛いなんて考えてる俺は
やっぱりコイツ甘いな。

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