恋 彼らのお話3

名前を呼んで　しんご3 ページ25

｢ひな。抱いてええ？｣
｢抱いて。ヨコ｣

あの頃はこんなこと言うと思わんかった。
ヨコ、ってこの部屋で呼んだのも
どれくらいぶりやろか。
キスしながら呼んだのは、たぶんあれ以来やな。

名前なんて呼ばんでも互いのしたいことなんて
それこそ目ぇ見んでもわかる。
欲しいもんも、どうされたいかも。

だけど触れあってるときに
アンタに名前を呼ばれると
体の芯から蕩けそうになる。

｢ひな。ここ、ええ？｣
｢んっ。そこ、す、、き｣

何百回、何千回呼ばれただろ。
誰が呼ぶんとも違う。
アンタの呼び方が好き。

もっともっと。呼んで。
愛しい声で。
熔けてなくなる前に
もっと。

挿し込まれた指が俺んなかで暴れる。
ええとこをグリンと掻き回して
俺に恥ずかしい声を出させる。

んぁぁっ。い、やぁ

｢嫌なん？やめよか？｣
首を振るしかできん俺に追い討ちかけてくる。

｢言えや、欲しいって｣

｢ほしっ、ヨコ、、シテ｣

｢なにしてほしいん｣

ひな、言って。
耳許で囁く。

あっ、、ふっ、、

そんなんされたら出てまうって。

｢きみ、きみたか、、いれて｣

宛がわれてめり込んでくる。
一番奥まで届いたときには
半ば意識は飛んでいて。

俺が逝く時には
最後にどっちの呼び方が聞こえるんやろか。
ぼんやりした頭に
そんなんが浮かんできたけど
あっという間に波に飲み込まれて
どうでも良くなった。

俺はきみたかに溺れる。
甘く濁った熱い波。

気づいたら弾けた欲も綺麗に拭かれてた。
何度も哭かされて
クタクタになった体。
少しの間、動けんようになっとった。

｢信五。大丈夫か？｣
俺の髪を撫でながらきみが心配そうな顔をする。

｢熔けたかと思うたわ｣
｢何アホなこと言うてるん｣
心配顔がフニャッとなった。
そないにほっぺた、赤くせんでもええのに。

｢ん。きみ、キスしてぇな｣

ちゅっ

相変わらずきみは音をたててキスをする。
キスがまだオフザケやった頃から。
きっと100年経っても変わらんやろな。

｢ひなちゃん、愛してんで｣
｢もっかい言うて｣

｢信五、愛してる｣

｢きみ、愛してる｣

ちゅっ
ふたりのキスはやっぱり音がする。

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