恋 彼らのお話3

春色　きみたか1 ページ1

カフスをつける仕草がこなれてて色っぽい。
桜色のシャツにライトグレーのパンツとベスト。
ハンガーにかかった揃いのジャケットに
ボルドーのチーフが刺してある。

長い睫毛。すらりとした指。真剣な横顔。
出掛ける支度をしている信五を
ベッドに腰かけて見てるのが好き。

今日は夕方から事務所の先輩カップルの結婚パーティ。
『春色の装いでお出でください』
招待状にさりげなく書かれたドレスコード。

チーフと同じ色のネクタイをきゅっと直すと
｢こんなんでええ？｣
鏡越しに俺に尋ねる。

｢よぉ似合うてる｣
そう言うと満足げに微笑んだ。
信五は意外に甘い色が似合う。
男前やな。贔屓目じゃなく。

早く脱がせて乱したい。
邪な気持ちが頭をよぎる。

俺はシルバーの細身のスーツにグレイリッシュピンクのシャツ。
細いナロータイはスーツより濃いめのグレー。
信五のリクエストで縁のないスクエア形をかけてる。
ホントは信五と同じ形の三つ揃えでもやかったんやけど
なんだか貫禄がちゃうねん。
ボスと参謀。それが俺の裏テーマ。

｢きみ、そろそろ時間やで｣

揃いの腕時計をつけて
チーちゃんにいってきますのご挨拶。
今夜は会場近くのホテルをワンフロア押さえてあるらしい。
心置きなく飲んで楽しい夜を過ごして欲しいと
先輩カップルからの粋な計らい。

｢ほな、行こか｣

忘れ物はないか、指差し確認させられてから玄関を出る。
マルとおーくらがロビーで待っているはず。
今日は俺の車で乗り合わせて行く。

エレベーターのなかで腰を抱き寄せたら
一瞬眉間に皺よせたけど
本意じゃないのはわかってる。
2度めのキスは自分からくちびる触れてきた。

｢なぁ、きみ｣
上目使いで俺を見上げる。

｢行くの、やめへん？｣

｢どうした？気分でも悪いか？｣
｢ちゃうねん。きみが男前過ぎて外、出したない｣

ふっ。何、可愛らしいこと言ってん。
今すぐ引き返したろと思ったら
チン！と無情にも到着のベルが鳴る。

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