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ジヨン先輩に強く手を引かれて、エントランスを潜り抜けると
有無も言わさずに押し込められたタクシーの後部座席
行き先を告げた先輩はどこかに繰り返し電話をかけているけど繋がらないみたいで、イライラしてるのか眉間にぐっと皺を寄せて爪を浅く噛む
シーンと静まり返った車内で、着信音が響き渡ったのはあたしのスマホで
窓の外を眺める先輩の横顔
繋いだままだった手のひらに、きゅっと…と力が込められる
“じゃあ待ってる”って、そう言ったテテの顔が浮かんで胸はぎりっと痛むのに
「巻き込んだのは俺たちだけど……最後まで見届けてくんねぇか?」
ゆらりと目眩がして
この手を
……振り払えなくなってしまう
マンションの前に止まったタクシー
先輩は慣れた手つきでオートロックを解除してその中へ足を進める
角部屋の前に立った先輩が小さく息を吸って、インターホンを鳴らすと
「セナっ」
焦った声で涙の膜を張ったスンリが飛び出してきた
「……ジヨンひょん」
「なぁ。スンリ……どういうことだよ?」
強い口調で詰め寄った先輩の目をスンリは拒むように逸らした
先輩が腕を掴むと、スンリの身体がぐらっと揺れて今にも崩れ落ちそうで
「……仕方ないじゃんか。俺はいつまで経ってもセナには2番手で」
掠れた声を絞り出すようなスンリに、先輩の手も震えていて
「俺……どうしたらいいのか、もうわかんない。セナと一緒にいたいけど、一緒にいたら苦しいよ。」
「スンリ」
「セナだってそれを望んでると思ったのに…もうやめよって言ったら……セナ飛び出しちゃって……帰って来なくて、どこ探してもいなくって」
泣きそうになった
こんなにも誰かを深く愛してるのに
愛することが、これほどまでに悲しくて儚いなんて
「セナがどこに行ったかなんて……本当はわかってんだろ?1番近くにいたのは…スンリ。お前なんだから。」
先輩の口から漏れる、独り言のような言葉
それに応えるようにスンリが小さく首を振れば
「ごめん…………全部俺が悪かった。」
スンリに向けられたのは、さっきよりずっと
優しい声
伝わる
痛いほどに
ジヨン先輩が、誰を想っているのかなんて
あたしはここで
両足で踏ん張って
立ってるのが精一杯で
打ち付けるように真っ直ぐな、ジヨン先輩の声を聞いてた
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merry(プロフ) - なつこさん» なつこさん!お返事遅くなりました(>_<)未だに不安定な状態で心配事もたくさんありますがわたしもなつこさんとまたお会い出来るように準備しております!体調をくずされませんようお元気でお過ごしください! (2020年6月3日 23時) (レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
なつこ - お元気ですか?見えない敵と闘いつつ、もはや共存していかなければならない今になって、自由やありのままの生活のありがたさに気づきました。merryさんと再会できることを願っています。ご自愛ください。 (2020年5月9日 22時) (レス) id: c319d287df (このIDを非表示/違反報告)
merry(プロフ) - たかさん» たかさん!いつもありがとうございます。たくさん更新出来いことや、色々思い悩んでましたがこんな素敵な言葉を頂けて嬉しくて幸せです。テテちゃんのお話とジヨン先輩のお話楽しみにお待ち頂けるとありがたいです(*^^*) (2020年2月26日 0時) (レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
たか(プロフ) - merryさん!とりあえずお疲れ様でした。そして新しいお話ありがとうございます!テテにも素敵な幸せが来ること楽しみにしています。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: b941ac7055 (このIDを非表示/違反報告)
merry(プロフ) - ともこさん» ともこさん!わーん(><)ひとつひとつ言葉を大切に読んでいただけて本当に嬉しくて泣きそうです。これから甘々なジヨン先輩を想像していまからにやけてます。本領発揮したジヨン先輩のターンをもう少しだけお待ちくださいね!いつもありがとうございます! (2020年2月7日 1時) (レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:merry | 作成日時:2019年9月19日 20時