HONEY HOLiC

Darling 5 ページ5

｢ジヨン。お前その顔で客の前出るなよ。｣


｢は？なにが？｣





あれはAと付き合って間もない頃



出勤するや否やたっぴょんにそう言われて



意味がわからず首を傾げたら






｢ひょん。今日Aちゃん家から来たでしょ？｣


｢……｣


｢顔見たらすぐわかっちゃいました。｣





にやにやして、スンリのくせにからかった口調


慌てて鏡を覗けば、情けないほど口元が緩みきった俺がうつる




あー、まじか



俺はずっとこんな顔晒してたってのかよ？



無意識に上がった口角


はぁーっと盛大にため息吐き出して、手のひらでペチンと顔を叩いたら





｢お前も変わり者だな。Aの何がそんなにいいのか俺には全くわからん。｣



鼻で笑ったたっぴょんに返す言葉が思いつかない




俺だって、わかんねぇ







うるせぇし


すぐ泣くし





なのになんで、こんなにもAじゃないとだめなのか



Aのペースにいつも巻き込まれて


俺の生活の中心はいつの間にかAになっていて




この先死ぬまで、俺はA以外を好きになることはないんだろうなって



そんなこと俺が考えてるのを、お前は知らねぇだろ？








｢眠たいけどお腹空いた。｣


｢さっき散々食ったくせに。｣





髪を乾かし終えると、Aが俺の胸元に寄り添ってくる



Aの体温はすげぇ居心地がいい




叶うことはないと思ってた


一生俺の片想いなんだと





Aの髪を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細める




こんなふうに、触れることをどれほど待ち望んでいたか





｢焼肉食べたい。｣


｢明日な。｣


｢やった！じゃあ、すんちゃんと……テソンも誘ってみんなで行こう？｣




………みんなで、か



まぁ……別に




“みんなと一緒”で、Aが楽しそうにしてるのはいいけど





いや、ちょっと……かなり面白くない






｢ねぇねぇ、ジヨン。｣


｢ん？｣


｢予約録画ってどうやるんだっけ？｣


｢この前教えたばっかだろ。｣


｢でも上手く出来ない。｣


｢お前さ、俺が居なかったらなんもできねぇのな。｣


｢うん。でも、それでいいの。｣




Aにしてみれば、今の言葉に深い意味なんてないんだろうけど



俺はそんな些細なひと言にすら、簡単に振り回されて



Aと一緒にいてもいなくても、Aのことしか考えられなくなる




もうどうしようもない




ばかみたいだけど



悔しいほどに



俺はAに夢中なんだよ

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