誰かの罪悪感 ページ44
｢それは、カムイからのお告げかもしれないな。それが、本当にカムイの見せた夢なら、それはいつか現実になる･･･良かったな杉元、幸せそうな夢で！｣
｢あ、いや･･･それは絶対ありえないぜ。｣
｢どうしてだ？｣
｢だって･･･｣
そこで杉元は、先程見た夢の内容を思い返す。その夢に出てきた、声だけの主たちのほとんどは、杉元たちと敵対する一癖も二癖もある集団だった。そして、何より────
｢あいつが、俺を追いかけるのをやめるわけがないんだ。｣
｢なんのことだ？｣
｢あー杉元さん、急に眠くなってきたから寝るね。アシリパさんも早く寝なよ。｣
｢ちょ、杉元･･･逃げるな！｣
｢ああ、うるさいうるさい･･･アシリパさん、あんまり大声出すとみんな起きるからね？あ、尾形はとっくにお目覚めのようだ。｣
｢フン･･･｣
そこで、話はお開きになった。
(あいつは、見る度に体の一部を失って、狂っていく。全ては失った片割れの復讐のため。あいつこそが不死身なんじゃねーか、って思うくらい何をしても死なねえ。そんな奴が、俺を殺そうとするのをやめるわけないんだ･･･)
杉元は残った片割れが、会う度にどんどん狂っていくのを見るのがただただ、辛かった。それは、かつて日露戦争で狂ったように、意地でも死なないように戦った自分と、無意識に重ねているからかもしれない。
でも、何がどうあれ敵だ。だから、片割れとの戦いにおいて情けも容赦もなかった。例え、かつて存在した片割れを、この手で消した罪悪感に苛まれていたとしてもだ。
そう。杉元は片割れに罪悪感を感じていた。だから、いつか自分を追いかけるのをやめてくれたら、復讐をやめてくれたら･･･これ以上片割れに罪悪感を感じることなんてなくなるのに･･･、とふとしたときに、毎度思うのだった。
だが、それは全て自分に都合の良い話･･･夢物語に過ぎない。その思いが、半ば現実逃避をしたい思いが強すぎて、それが夢となって、杉元に見せただけだ。
ならば他にも出てきた、仲間の数人も含めた、あの集団の和やかな声の騒音はなんだったのだろうか。別に、あの敵である集団と仲良く、朗らかにしたいという願望は、これっぽっちも思ったことはなかった。
(なに、たかが夢でこんなに悩んでいるんだ俺は･･･)
幾分かした後杉元は、そう馬鹿らしいと思い直し、また現実世界から意識を遠のけた。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
