兎の仮面 ページ20
｢門倉部長が･･･宇佐美さんを殺そうとした･･･囚人を使って･･･だから、宇佐美さんの刀を門倉部長が持っていた･･･！う、宇佐美さんが抵抗出来ずにこ、殺せるように･･･うぅ･･･あ、あぁ･･･｣
Aは、ついにいってしまったことへの罪悪感で嗚咽をあげる。ついに、Aが長年慕っていた門倉がそんな悪徳非道なことをした、と。嘘でもいってはいけないことをいってしまった、と。
｢う、宇佐美さん･･･ち、違いますよね？やっぱ、間違っていますよね？門倉部長がそんな酷いことするわけないですよね？だって、あんなに優しい人がそんなことできるわけないですよ？門倉部長は気が弱くて、ちょっと頼りないけど信頼できる人ですよね？だ、だから、違うの！そ、それだから･･･｣
Aは必死に宇佐美に抗議した。必ず違うと否定してくれると思って。あの優しい宇佐美なら、きっと双方悪いわけではないと否定してくれるはずだ。囚人は間違って外に出したからとかきっとそんな感じの。しかし、宇佐美はそのAの様にこれでもかというほど眩しい笑みを浮かべた。
｢ふふ。Aさんは賢くて助かります。大正解です！｣
歪んだ笑みを浮かべた宇佐美は、Aを絶望のどん底に墜とす一言を、まるで、新しいおもちゃを見つけた子どもように嬉しそうにいった。瞬間、Aの顔がそれ以上表情筋が上がらないくらいに強ばった。
｢な、なんで、違うわそんなわけ嘘よ･･･嘘に決まって･･･！｣
｢正解者にはご褒美をあげなくちゃ♪｣
そう、Aの言葉を遮った宇佐美は、Aの唇に強く口付けをした。
｢ッ･･･な、なにして･･･！｣
｢Aさん。僕は、ただの新人看守じゃありません。｣
｢え？｣
そして宇佐美は自らその偽りの仮面を剥がした。
｢僕は、のっぺら坊に関する情報を探るため、第7師団からここ網走監獄に送られてきたスパイです！｣
｢だ、第7師団?!しかも、スパイ･･･！のっぺら坊って･･･｣
Aは、唐突に明かされた宇佐美の正体に、先程の門倉に対する不信感の余韻もあって、上手く脳内処理をすることが出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
