山猫に一目惚れ (ページ41)

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三途の川ページ41

｢───は！あ、あの、急用がありますので、わ、わたしはこれで！｣

嬉しさやら恥ずかしさやらで顔がすっかり真っ赤になったAは、尾形一刻も早く立ち去ろうとするが、そこでガシッと尾形に腕を掴まれる。

｢へ!?｣

｢────すみません。まだ、申し訳あげたいことがありましてつい･･･｣

｢い、いえ！大丈夫です！それで、どうしました？｣

思わぬ行動に驚きつつ、尾形に続きを促す。か、かれの腕が私の腕を───!!っと赤面しながら。

｢その、今度、改めてお礼させてください、A少尉。｣

｢────ッ!!｣

お礼なんてそんな必要ないといおうとしたが、最後に下の名前を言われた衝撃で言葉にすることができなかった。

(ひゃ、百之助さんに名前をよ、よばれた･･･!!Aって!!)

｢───!!すみません。良いお名前でしたので、ついつい下の名前で呼んでしまいました。｣

尾形は一瞬遅れて、無意識にAと呼んだことについて謝罪する。仮にも弟である勇作とですら、尾形は兵営にいる間は下の名前は呼ばない。公私混同が嫌いだからだ。なのに、今それを簡単にやってのけてしまい、自分が不甲斐ないと思いながら。

｢ふぁ？！｣

(良い名前だからついって!!もう、嬉しすぎて三途の川がみえ────!!)

またまた、Aは衝撃で奇声をあげながら、頭の中でてんやわんやと考える。

｢────申し訳ございません。語弊がありました───良いお名前ではありますが、藤宮少尉はその名に似合った女性だということをお伝えし損ねてしまいました。｣

尾形は先程の言葉が、思っていたのと少し違うことに気づき、詳しく訂正した。

｢────!!｣

Aは、もはや奇声をあげることすらままならないほど、嬉しさが爆発した。

(いい名前でも嬉しいのに、私自体もほめられるなんて───!!も、もう限界･･･!!ああ、おじいちゃん今そちらにいきます･･･)

ドタッ

｢ッ!!───藤宮少尉？だ、大丈夫ですか･･･?!｣

Aは、緊張やら興奮やらで頭に血がのぼり、ついに沸点に達した湯のようにのぼせ、そのままバタッと倒れた。尾形が自分を心配してくれるのが嬉しいと思いつつ、その意識は遠のいた。