山猫に一目惚れ (ページ5)

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整理ページ5

あの後Aは、当初の予定であった外での食事も忘れ、とにかく無我夢中で自身の執務室にたどり着いた。

部屋に入り、念の為、室内に誰もいないことを確認してから扉をしめる。執務机の椅子に座り、一息ついた後にAは自身の気持ちの整理を試みる。

(･････････はあ、かっこいい。好き。あ、ダメだ、違う、そうじゃなくて･･･)

しっかり、整理しないといけないと分かっているのに、彼に対する気持ちでいっぱいになってしまう。

(そうえば、名前なんていうんだろう･･････)

そこで彼女は父の言葉を思い出す。

『いくら将校とはいえ、兵士たちの名前はしっかり覚えておきなさい。全員とはいわないが･･････覚えておいて損は無いだろう。』

この時ばかりは、父の言うことを聞くべきだったと後悔した。

(とりあえず、この気持ちは一体どうすれば･･････!!)

Aは猛烈に、この気持ちを誰かに全てぶちまけたい衝動に駆られていた。しかし、情報を整理するにそれはあまり芳しくないようだ。

(まず、両親はダメ。将校ならともかく、たかが兵士に恋したなんて知れたら、どうなるか。すぐにでも、除隊させられて、無理矢理見合いさせられるかも･･･)

基本Aの両親はAに優しいが、色恋沙汰になると、途端に人が変わったように厳しくなる。地位のある人間以外には恋慕の情すら許さないのだ。

(だからって、軍の中には気軽に話せる人いないし･･･。)

士官学校からの少尉ともあって、経験と階級を重ね、少尉になった者とは、かなり年が離れている。そのため、友人のように気軽に話せるはずがない。(とくに鶴見少尉とか鶴見少尉とか鶴見少尉･･････)

(かといって、同じ年頃の者のほとんどは、二等卒か一等卒くらいで、距離を縮めにくいし･･････花沢勇作は苦手だし･･････)

そこまで考えてAはふと思った。そもそも、普段色恋沙汰からかけ離れている軍の男共にそんな話したら･･････

(絶対あることないこと面白おかしくいわれて、すぐに噂になってしまう！それを彼に知られたら･･････!!)

もう、切腹して死ねる･･････!!
Aはゴンッと頭を机に打ち付け突っ伏した。