疾走 ページ39
｢もう、ここでやっちまおぜ。｣
｢───!!｣
上等兵がそういった瞬間、Aは瞬時に角を曲がり駆け出した。
(もう、こうなったら直接いって止めるしか──!!)
Aは、豆粒くらい小さい尾形らに真っ直ぐに向かいながら、そう思った。そう、それほどAは、尾形らを遠くから見つめていたのである。しかし、Aは地獄耳なので、会話はしっかり聞き取っていた。
｢あ〜。罰として掃除かよ〜。｣
｢まじ、月島伍長きびし─ッて?!｣
｢はやくしなっ─ッて?!｣
駆け出して僅か数秒後。まだ、上等兵らは尾形に何もしていない。しかし、それも時間の問題だ。なにか起きる前に、直接でもいいから止めなくては、と思っていたAは、ドンッと廊下を歩いていた兵士にぶつかった。
｢あ、ごめんなさい！｣
｢いえ、こちらこそ！｣
ぶつかった瞬間、当人達は瞬時に謝罪した。そしてすぐにAは、彼を助けようと再び廊下を走ろうとした。しかし、ふと兵士が持っていた濡れた雑巾が目に入る。Aは瞬時に、これだ！と閃いた。
｢ちょっと、その雑巾貸して！｣
｢え？どうしてで･･･｣
｢いいから！｣
Aは、兵士の言葉を遮って雑巾を半ば強制的に奪い取った。そして、Aはそれを廊下に広げ、雑巾がけをする体勢をとった。
｢え？！藤宮少尉がそんなことしなくても！｣
｢これは、俺たちの罰則で･･･！｣
｢よーい、どぉおおおおおん！｣
兵士たちに構わずAは、廊下を滑るように雑巾がけした────あの上等兵らの足元に向かって。
｢さあ、尾形歯ァくいしばれ。｣
｢今日はめっちゃたまってんだ。1発や2発で済むとおもうな｢いけいけどんどぉおおおおおん!!｣──は？！｣
突然廊下から聞こえた叫びに、思わず、尾形を殴る姿勢のまま固まる上等兵。
｢へ？藤宮少尉?!って、こっちき──ッ!!｣
｢ぶつか──ッ!!｣
ドオオォオオーンッ！
Aは上手く、尾形を覗いた、上等兵2人だけに勢いよく衝突した。
｢あ、すいません。ちょっと、頑固な汚れが2つほどあったので、ピカピカにしようとしたのですが･･･中々落ちないですね！あははは･･･｣
｢───も、もどるぞ！｣
｢きょ、今日はここまでにしてやる！｣
そういって、上等兵2人は足早に立ち去った。
｢･････････｣
尾形はただ、ずっと黙っていた。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年11月20日 21時
