尊敬 ページ28
｢でも、さっきの言葉で、藤宮少尉が尾形一等卒を好きだということを改めて知ることができました。｣
｢なんていうか･･･本当に嬉しい限りです。｣
｢え？｣
思いもよらぬ双子の言葉にAは思わず聞き返す。
｢嬉しい？どういうこと？｣
｢あ、そのなんていいますか･･･｣
｢中々言葉にするのは難しいのですが･･･｣
そういって、双子は尾形について語った。尾形は、花沢幸次郎中将と妾の間に生まれた落胤だということ。勇作の腹違いの兄ということ。そこで、やはり噂は本当だったのかとAは密かに感じた。
そして、双子は続けてこう語った。尾形はその複雑な生い立ちのため、軍ではほとんどの人間に冷遇されているということ。上官からも二等卒からも酷い言われようだと。しかし、少なくとも自分たちは尾形をそれなりに尊敬している･･･といった内容であった。
｢思った以上に深刻ね彼･･･でも、あなた達のように思ってくれる人がいて良かったわ！｣
Aは、初対面のときとは違い、双子に好感を抱いた。
｢まあ、射撃の訓練で何様だコイツってくらい厳しく教えられて、腹立つことはありますが。｣
｢クソ尾形ッ！って何度思ったことか･･･｣
｢ク、クソ尾形って･･･汗｣
｢でも、尾形一等卒は、厳しいけど的確に教えてくださいます。｣
｢尾形一等卒に教えて貰ったときが、一番上達しましたし。｣
｢そっかあ。彼は射撃を教えるのもお上手なのね･･･｣
Aは、射撃を教える尾形の様子を想像して想いにふける。
｢だから、私達と同じように尾形一等卒を思って──藤宮少尉の場合は想って？──くださる方がいて嬉しいのです。｣
｢周囲の奴らは、頭ごなしに尾形一等卒を貶してばかりですから。共感できる人間がいなくて･･･｣
｢そういうことだったのね･･･｣
｢ですから藤宮少尉───｣
そこで、洋平は一旦言葉を区切る。
｢どうか、尾形一等卒へのその想い成就させてください！｣
｢そして、どうか尾形一等卒とお幸せに！｣
｢え？ちょ･･･｣
Aは急激な展開についていけなかった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年11月20日 21時
