ー 弐拾伍 話 ー ページ26
「本当に大変な事になりました…」
深刻な顔で鍵を開けながらそう呟いたのは、エーミール先生だ。
ふとゾムの顔を見れば、彼は何も言わずただずっと俯いているだけだった。
そんな二人の様子にどう反応していいか分からず、先生が開けてくれたいつもの場所に足を踏み入れた。
そして鏡扉の前に立って、いつものように押し開く。
開いた鏡扉から隙間からを除けば、驚いたような顔をしてこちらをみる彼がいた。
「…お?なんやお前ら、今日早いなぁ!」
私はそう言って揺れる彼のしっぽを見つめていたが、しばらくしてそれは止まった。
きっとゾムと先生の顔を見て、何かを察したのであろうコネシマさんが再び口を開いた。
「どしたんや?そんな深刻な顔して…」
コネシマさんも同じように顔を顰める。
それを聞いて、いよいよ黙っていたゾムが口を開いた。
「…鬼が、」
そうぽつりと呟いたのを聞いたコネシマさんの耳がぴくりと動いた。
「…座れ、ゾム」
そうはっきりと、彼は言った。
.
「…で、なんやねん。まさか封印が解けたとか言うんとちゃうやろな」
「そのまさかや、シッマ。既に二人いかれた…」
二人の会話を横で聞いている私とエーミール先生。
先生は目を瞑って何かを考えているようだったが私には何を話しているのか分からなかった。
「…やばいな、はよ手打たんと恐ろしい事になるで」
「分かっとる、分かっとるけど…」
ゾムがちらりと私を見る。
目が合ったが、彼はすぐコネシマさんの方へ向き直った。
「…確かに、お前の気持ちも分かるけど、時間が無いんやで…俺はもう、あんな思いはしたくない」
「ッ、」
苦しそうな顔をするゾムに、私は「大丈夫?」と声をかけようとしたが、出来なかった。
だって、ゾムは再び私の顔を見て泣きそうな顔をするものだから。
いつもふざけて笑っていたゾムはどこに消えてしまったのだろうか。
最近はその面影も見なくなってきたなあ、と思う。
かわりに最近よく目にするゾムの辛そうな顔は居心地が悪い。
「俺は、Aを危険な目に合わせたくない…」
____だから、そんな泣きそうな顔をしてこっちを見ないで。
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汐里(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» コメントありがとうございます(^ ^) ほんとはhtrnさんも出したかったんですが、人数の都合上で...汗 楽しんで頂けたら幸いです!これからもこの作品をよろしくお願いします(-人-) (2019年11月23日 11時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 花が好きなの、hらんらん先生や無かった…意外…でもrbさんに花持たせたい…絶対かわいい……ニヨニヨ(( 続き楽しみにしてます! (2019年11月23日 11時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - saikaさん» コメントありがとうございます(^ ^) 確かに和風あまり見ないですよね...完全に私の好みを小説にしてしまいました笑 お褒め頂き光栄です!これからもこの作品をよろしくお願い致します(-人-) (2019年11月22日 18時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
saika(プロフ) - コメント失礼します....!wrwrdの作品で和風系の作品はあまり見ないので凄く新鮮で面白いです.....!登場人物の描写からなにから何までとても好きです.....!これからも頑張ってください!!!! (2019年11月22日 17時) (レス) id: dff2d77afc (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - あややさん» コメントありがとうございます(^ ^) お褒めの言葉を頂き光栄です...!励みになります。これからもこの作品をよろしくお願いします(-人-) (2019年11月10日 7時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐里 | 作成日時:2019年11月8日 19時