ー 弐拾 話 ー ページ21
「ま、今日は遅いし帰ろか」
ゾムが私に呼びかけるので、腕時計を見ればもうかなり時間が立っていた。
「おー、あんま遅なるとあかんしな、そろそろ帰りや」
コネシマさんが立ち上がって、座っていた私の手を掴んで立ち上がらせる。
「まあ暇やったら、明日も来てや」
「…もちろんです、また来ます」
そう言った後、鏡扉を閉める際に隙間から見えたコネシマさんが「待っとるからな!」と尻尾をゆらしていた。
その光景を見て私は静かに微笑みながら手を振ったのだった。
.
コネシマさんと別れてから、ゾムと二人並んで帰路につく。
いつものように自転車を押して歩くゾムの横顔をじっと眺めれば、彼もまたこちらを見た。
「どしたん?」
「…夢みたいでさ」
私がそう言うとゾムは軽く笑った。
「まあいきなりやったしな、でもAは相当肝座っとると思うで?予想よりだいぶ落ち着いとるし」
「…自分でもびっくりしてる」
そう、正直自分でももっと驚いても良かったんじゃないかと思ってしまう。
普通の人よりか感性が鈍っているんじゃないかと、自分でも少し疑ったくらいだ。
そんなことを思っていると、ゾムがぽつりと呟く。
「…シッマはな、何百年も前から生きとるねん」
「…そうなんだ」
そう一言だけ返したが、よくよく考えて見ると聞きたいことはたくさんある。
ゾムやエーミール先生と、コネシマさんはいつ知り合ったのかとか、コネシマさんがなんで私の名前を知っていたのかとか、七不思議についてもたくさん、聞きたいことがある。
そんな私の雰囲気を察してか、ゾムは「そんな顔すんなや」と私の頭を小突いた。
「帰ったら、電話せぇへん?」
「…ゾムと違って私は勉強が、」
私の顔を覗き込むゾムに、渋ってそう言うと彼は苦い顔をした。
「Aは一旦、勉強から身を引いた方がええで」
「あんたはもっと勉強に勤しんだ方がいいよ」
私がそう言うと、彼はまた軽く笑った。
.
他愛のない話ををしばらくして、私の家の前に着く。
「送ってくれてありがと、またあしたね」
「まあ通り道やし別にええよ、とりあえず明日は先行かんといてな!」
ゾムは自転車に跨り、「おやすみ!」と言って去っていった。
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汐里(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» コメントありがとうございます(^ ^) ほんとはhtrnさんも出したかったんですが、人数の都合上で...汗 楽しんで頂けたら幸いです!これからもこの作品をよろしくお願いします(-人-) (2019年11月23日 11時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 花が好きなの、hらんらん先生や無かった…意外…でもrbさんに花持たせたい…絶対かわいい……ニヨニヨ(( 続き楽しみにしてます! (2019年11月23日 11時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - saikaさん» コメントありがとうございます(^ ^) 確かに和風あまり見ないですよね...完全に私の好みを小説にしてしまいました笑 お褒め頂き光栄です!これからもこの作品をよろしくお願い致します(-人-) (2019年11月22日 18時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
saika(プロフ) - コメント失礼します....!wrwrdの作品で和風系の作品はあまり見ないので凄く新鮮で面白いです.....!登場人物の描写からなにから何までとても好きです.....!これからも頑張ってください!!!! (2019年11月22日 17時) (レス) id: dff2d77afc (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - あややさん» コメントありがとうございます(^ ^) お褒めの言葉を頂き光栄です...!励みになります。これからもこの作品をよろしくお願いします(-人-) (2019年11月10日 7時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐里 | 作成日時:2019年11月8日 19時