【d!】化け犬さん、またいつか。

ｰ 拾玖 話 ｰ ページ20

六つ目まで説明してくれたゾムはふぅ、と一息ついてから笑顔で言った。



｢最後やな！七つ目は、落ちてくる首無人間の影や｣

｢え？なに？｣



首無…くびなし…！？
さっきそんなこと言ってなかったじゃないか！
首がないなんて私は聞いてない！



｢ほんまに首ないで、A｣

｢なんでそんな楽しそうなんですか？｣


ケラケラと笑うコネシマさんに突っかかると、｢いやぁ、だってお前おもろいもん｣とまた笑われた。

私がはぁ、とため息をついていると、ゾムに｢疲れすぎやろ！｣とコネシマさんと同様に笑われた。

いや、だって、仕方ないじゃないか。
こんな非日常を目の当たりにして、誰が平然としていられるんだ…。


｢ま、そういうわけでやな、Aにはその七不思議の霊を成仏させて欲しいねん！｣

｢無理｣


なんだその笑顔は。
なんでそんなにお前は楽しそうにしていられるのか分からない。私の気持ちも考えてくれ！

｢なんでや！？｣と私の両肩を揺さぶるゾムに｢いや無理！怖い！無理！首無は無理！｣と必死の弁明をする。


それを横から黙って見ていたコネシマさんが口を開いた。



｢…無理難題な事を押し付けよるのは、俺にもよう分かっとる…けど、Aにしか出来ひんねん、｣

彼はまた寂しそうな顔をする。
その顔はダメだ、私の良心が痛み出すから。
ただそれだけでも辛いのに、


｢…お願いや、A｣

｢うっ…｣


くぅん、と今にも犬の鳴き声が聞こえてきそうなコネシマさんの表情に不覚にもきゅんとしてしまった。
だからチョロい、私。


｢…どうしたら、成仏させられるんですか？｣

｢その霊達の頼みを、聞いてやって欲しいねん。…話だけでも、頼む！｣


コネシマさんが頭を下げる。どっちかと言えば土下座に近い状態であり、私はあたふたしながら｢いや、あの、顔を上げてください…！｣と言うと、コネシマさんはゆっくりとこちらを見上げた。


｢…分かりました、出来る範囲でなら…協力しますから｣


私がそう言うと、コネシマさんは ぱあっと笑顔に花を咲かせて私に抱きついてきた。
私は急なその重みに耐えきれずに尻もちをついた。


｢あーもう、さすがAやん！ほんま頼りになるわ！｣


あ、しっぽが揺れてる。
そんなに喜ばれると、なんだかむず痒いような気もするけれど。


｢…どういたしまして｣

そう呟く私を、ゾムは切なそうな顔で微笑みながら見ていた。

ｰ 弐拾 話 ｰ→←ｰ 拾捌 話 ｰ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す