ｰ 拾伍 話 ｰ ページ16
｢…待って、何言ってるの？｣
｢A、お前の気持ちも痛いほど分かる。俺やってそんなん言われても嘘や！ってなるから…でもこれは嘘やなくてほんまなんやって、｣
いつになく饒舌に喋る彼を、心配そうな瞳で見つめていると、彼はまた気難しそうな顔をして｢…それが普通の反応やんな｣と言った。
普通も何も、そんな急に突拍子もない事を言われて｢へー、そうなんだ｣と理解できる程の頭は生憎持ち合わせていない。
しばらく私が黙っていれば、彼は｢しゃーない…｣と言ってあの鏡の前に立った。
そしていつものように手でぐっと押すと、鏡は半回転をする。
｢…A、こっち来てや｣
｢え、なに、怖いんですけど、｣
ゾムに手を引かれ、祠の前に立たされる。
｢え、なに？まさか本当にいるっていうの？私には見えないけど｣
｢今はお前に見えてへんだけやから。｣
焦りから早口になる私を宥めるように彼は言う。
じゃあ、ゾムには何が見えてるっていうの…？
｢…お前に、会いたがってるねん｣
彼の一言が、やけに重く響いた。
それに対して私が震える声で｢どうして｣と聞けば、彼は悲しそうな顔をした。
｢…覚悟があるなら、お前は今ここで、真実を知るべきやと俺は思う｣
｢ねえほんとに何言ってるの？｣
私の頭の中にははてなマークが埋め尽くされ、ゾムの豹変に少しだけ、恐怖を覚えた。
｢嘘は一つも言うてない…なあ、頼む。｣
真剣な目で言うゾムは、私の腕を強く掴んで離さない。その力の篭もり方から、冗談っぽさは見受けられなかった。
｢…私は、何をしたらいいの｣
そう聞けば、ゾムは腕を掴んだ手の力を緩めた。
｢名前、呼んだって、喜ぶから｣
｢…名前？｣
ゾムらしくない、穏やかな顔をして彼は｢コネシマ｣と言った。
｢コネ…それが、名前なの？｣
｢せや、お前の後ろに、座ってる｣
ばっと後ろを振り向くが、やはりそこには誰もいない。
信じられないと言う私に、
｢一回でいい、お願いや…｣
ゾムが、あまりにも悲しそうな顔をするものだから。
｢…コネシマ、さん…？｣
小さく、そう呟いた。
.
｢＿＿＿＿A、ッ、｣
しゃら、とかつて聞いた鈴の音がしたと思うと同時に、途端に力強く抱きしめられる。
私が瞬きした瞬間に、そこに、人が、…ひと、？
｢まっ、ちょ、…え、なに…っ、｣
振り返りたくても身動きの取れない私は、ただただ顔の見えない相手の、揺れるしっぽを見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
汐里(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» コメントありがとうございます(^ ^) ほんとはhtrnさんも出したかったんですが、人数の都合上で...汗 楽しんで頂けたら幸いです！これからもこの作品をよろしくお願いします（-人-） (2019年11月23日 11時) (
レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 花が好きなの、hらんらん先生や無かった…意外…でもrbさんに花持たせたい…絶対かわいい……ﾆﾖﾆﾖ(( 続き楽しみにしてます！ (2019年11月23日 11時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - saikaさん» コメントありがとうございます(^ ^) 確かに和風あまり見ないですよね...完全に私の好みを小説にしてしまいました笑 お褒め頂き光栄です！これからもこの作品をよろしくお願い致します（-人-） (2019年11月22日 18時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
saika(プロフ) - コメント失礼します....！wrwrdの作品で和風系の作品はあまり見ないので凄く新鮮で面白いです.....！登場人物の描写からなにから何までとても好きです.....！これからも頑張ってください!!!! (2019年11月22日 17時) (レス) id: dff2d77afc (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - あややさん» コメントありがとうございます(^ ^) お褒めの言葉を頂き光栄です...！励みになります。これからもこの作品をよろしくお願いします（-人-） (2019年11月10日 7時) (レス) id: 4d2571021c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：汐里 | 作成日時：2019年11月8日 19時
