99.浮雲を辿って ページ1
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『……こたきさん』
「なに、ちょっと今話しかけんといて」
『うん、でもな、』
「今真剣やから」
『うん、せやね、でもさあ、』
「よっしゃ！いけた！車線変更できた！」
『あー、うん、おめでとう』
ドライブ行くで！と無理やりのんすけに駆り出され、無理やりマイカーを奪われ、無理やり助手席に乗せられているお正月3日目。
隣にはめちゃくちゃ真剣な顔で進行方向とサイドミラーとを見るのに忙しそうなのんすけ。
「ほんで？なに？どうしたん？」
『めっちゃ口開いとった』
「そんだけ！？そんだけの為に車線変更しようとしてる俺に話しかけたん！？」
『あほ面やなー思て』
「あほ面でもイケメンやねんからええやんけ」
『プライベートでそれ言うん、だいぶさぶいで』
「うっさい！緊張してんねん！」
『なんでぇや。ゆーちゅーぶで乗ってた車よりだいぶちっちゃいやん、これ』
「急にサイズ変わったら分からへん」
『無理やり運転席奪ったんあんたやん』
「ｳﾝﾃﾝﾑｽﾞｶｼｲ」
『運転変わろか？』
「いやや！今日は俺が運転すんねん！Aは大人しく助手席乗っとけ！」
『……安全運転でお願いしまーす』
普段、誠也くんの運転に慣れてるからか、のんすけの運転にソワソワしてこっちが心配になってしまう。誠也くんてやっぱり運転うまいんやなあ。
『ところでどこ行くん』
「決めてない！」
『うせやん！』
「とりあえずA乗せて運転したかった！」
『無邪気かよ』
「無邪気な俺かわいない？」
『ｿｳﾀﾞﾈｰ』
「もっと気持ち込めて言ってくれ」
『あ、高速乗っちゃった』
いつも通り、中身の無い軽快なテンポの会話繰り広げてたら、車線変更し損ねた車はそのまま吸い寄せらるように高速の乗り口へと突入。こうなってしまえば引き返すなんてことは出来んくて、ETCが通行料を支払った音だけが車内に響いた。
「Aが話しかけてくるから！」
『話してた方がちょっとは気紛れるかなって思って。良かったやん、ETC通れて』
「こっからどうすんねん！」
『どうしようねえ？』
「呑気すぎん？」
『もうだって焦ったって仕方なく無い？引き返されへんのやしドライブ楽しもうよ』
「正月からどこ行くねん、俺ら……」
『ドライブ東京観光決行です！いえーい！』
「テンションたっか」
『無理やり上げてかなやってかれへん、こんなん』
「こんなん言うな」
『相手がのんすけじゃなきゃ動画回してたのになあ。残念』
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作者名：てと | 作成日時：2023年1月29日 17時
