11.唇から伝染する ページ12
.
キャンキャンうるさく文句を言い続けるその唇に、蓋をするようにもう一度深いキスをした。呼吸を求めたAが口を開けた隙を狙って舌を滑り込ませる。
『ふぁっ、』
「はぁ、俺がどんだけ我慢したと思ってるん」
『そ、んなん、知らんもん、』
「ほら、べーってして」
『むり。いや』
「ええの？せな気持ちよくなられへんで？」
『いいもん、べつに』
「俺は良くないねんけどなあ」
『知らん。せんよ。絶対せえへん』
「俺誕生日やねんけどなあ。俺のやりたいことやってくれへんのかあ。そっかあ。愛されてないんかなあ、俺」
『……それ言えばなんでも許されると思ってるやろ』
「そんなことないって(笑)」
『……今日だけやからね、』
「ん、よくできました」
頭をポンポンと撫でると、真っ赤な顔して遠慮がちにべって出されたかわいい舌に吸い付き、そのまま絡めとって深くキスをする。さっきよりも深く。俺からの愛が伝わるように。
『、はあっ、ちょ、せやくん、まって、』
「待たへん」
『そうじゃなくて、』
息を切らしながら俺の肩を押すAに、さすがにやりすぎたかと唇を離す。涙目になって蕩けきったその顔は、正直今すぐにでも続きをしたいところやけど、Aの呼吸が整うまで少し我慢する俺めっちゃ偉い。
「ごめん、やりすぎたな。大丈夫か？」
『ん、だいじょぶ、』
「ほんなら続きいい？」
『ちょ、まって、』
「ん？まだあかん？しんどい？今日はやめとく？」
『じゃなくて。あのね、誠也くん。お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。えっと、あの、……これからもだいすき、です、』
恥ずかしがって滅多に自分から好きなんて言わへんAからの"だいすき"は、かなりの破壊力で。相当勇気を振り絞ったのか、恥ずかしさを誤魔化すかのようにA自ら腕を回してきて俺の首元に顔を埋めた。なんなん。めっちゃ積極的やん、今日。誕生日マジック？
誕生日マジックでもなんでもいいわ。好きな女の子に顔真っ赤にして大好きなんて言われたら、喜ばへん男なんておらんやろ。そんな男おったら見てみたい。
「こちらこそ出会ってくれてありがとう。来年もその次もこうやって隣で誕生日祝ってな？俺も愛してるよ、A」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 632人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てと | 作成日時：2022年9月3日 5時
