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「ちがうちがうちがーうっ！」
コーチの怒声に、演技を中断した少女が肩を落とす。
コーチは手にした拡声器をアシスタントの俺に押し付けると、自ら滑り始めた。「ここでターン、手の角度はこう！ お前ら揃いも揃って表現力が無さすぎる！」
指導はますますヒートアップする。「もっとこう、切ない感じで滑れないのか？ 相手を想うだけで辛い、苦しい、そんな恋をしてる気持ちで！」
俺は苦笑した。「この年でそんな恋愛してたら末恐ろしいっすよ」ここは小中学生クラスだった。
コーチは拡声器をひったくると、「最後、作間。やってみろ」と生徒の集団に声を掛けた。
１人の少年が前に出てくる。
細い身体に白くもちもちな顔を乗っけたこの中学１年生を、俺は幼少期から知っていた。
真面目な性格で振付にとことん従順、精密機械のごとく正確な技術を持ち合わせている。才能もあるし練習熱心だし、コーチ陣からの評判はすこぶる良かった。
だが俺は、彼の一歩引いた感じというか、お高く止まった感じというか、とにかくどこかにしっくりきていなかった。なんだかロボットみたいで、ちょっと不気味だった。
切ないなんて感情、こいつにあるわけないじゃん。
俺は腕を組み、滑り始めた彼を眺めた。
ん……、んん！？
自分の顔から薄ら笑いが引いていくのが分かった。生徒の集団もざわついている。
お手本のように正確な振りの再現に、体に叩き込まれた完璧な身のこなし。
それはいつも通りなのだけれど、顔つきが、明らかに普段と違った。
辛いような、苦しいような、……コーチの言葉を借りると、それはまるで切ない恋をしているかのような表情だった。
どうした作間。お前、俳優にでもなるつもりか。
ざわつく周囲など目に入らないかのごとく最後のポーズを決めると、彼はすっと手を下ろす。
同時に、普段通りの無表情に戻った。皆が静まり返る。
「……お、おう。良かったぞ」コーチが動揺していた。生徒同士も口々に「すごい」と囁き合っている。
その時、俺は本日２度目の驚愕をした。
「ありがとうございます」とお辞儀をした彼は、そのついでに生徒たちに向かいにこっと笑い掛けたのである。しかも、照れたように体をくねくねさせながら。
再び周囲がしーんとなった。
どうした作間。お前、何かに目覚めてしまったのか。
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真澄(プロフ) - 浬さん» コメントありがとうございます。5年前のいがさくのお話ですね！ちびさくにお兄ちゃんぶるガリさん書いててすごく楽しいので、読んで頂けたら嬉しいです♪ (2021年2月26日 9時) (
レス) id: 0317dce8be (このIDを非表示/違反報告)
浬(プロフ) - 仲直りはチョコの味キュンキュンしました！今回は昔のいがさくのお話ですかね？わくわくします(^ ^) (2021年2月22日 13時) (レス) id: 2a1dda425f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» コメントありがとうございます。キャンパスライフ早く書きたいのですが、DKたちを卒業させるのももったいなくて悩ましいです(笑) (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 浬さん» お久しぶりです！コメントありがとうございます。雪の降る日はけっこう直感で書いたのですが気に入って頂けて良かったです♪今回のも楽しんでもらえたら嬉しいです！ (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
爽 - またまたお久しぶりです。仲直りはチョコいいですね！更新待ってますね。大光君とのキャンパスライフも楽しみです(^^) (2021年2月11日 11時) (レス) id: 5e1c872bd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年1月15日 16時
