66 ページ20
目の前に立っていたのは、水色の制服を着た中年の男性だった。
紺色のベストの胸元にある『警視庁』の文字に、私の心臓が飛び跳ねた。
「このあたりは繁華街に近いから、いま深夜徘徊の指導してるとこなんだけど。君、高校生だよね？」
警官はさくちゃんの制服を一瞥して、脇に挟んでいたバインダーを取り出す。「補導対象になるからね。ちょっと生徒手帳見せて」
腕時計に目をやると、すでに23時を過ぎている。
いつもより遅い時間に家を出たことをすっかり忘れていた。
さくちゃんは落ち着いて「はい」と答えると、定期入れから学生証を抜いて立ち上がった。
学生証に視線を走らせた警官は目を丸くする。「えらく良い学校行ってるじゃん」
自分の背中から、汗が滲み出るのを感じた。
「作間龍斗くん、17歳ね」警官がこちらに顔を向ける。「……そちらは、お姉さん？」
私は思わずびくっと体を震わせそうになったのを堪え、立ち上がった。「いいえ、違います」
「友人のお姉さんです。今、自宅まで送って頂いていたところです」
私が言い終わらないうちに、さくちゃんが横から口を挟んだ。
警官はさくちゃんと私の顔を見比べて、ふんと鼻を鳴らした。
「作間くん、親御さんは？ 遅くなること連絡してるの？」
「いえ、一人暮らしなので」
「え、一人暮らし？ 君、高校生でしょ。なんで？」バインダーに向かい何かを書き込んでいた警官の手が止まる。
「ちょっと事情があって……」
さくちゃんは、ちらっと私を見た。
「……まあいいや。しっかりしてそうだし、今日のところは親御さんに連絡はしないでおくよ」
警官はさくちゃんの顔を遠慮なくじっと眺めてから、また何かを書き込み始めた。「親御さんは君の素行を信じて一人暮らしを許してらっしゃるんだろうから、期待を裏切らないようにね。くれぐれも羽目を外しすぎないように」
「はい、すみませんでした」さくちゃんは深く頭を下げた。
「で、あなた」
警官は私をボールペンで差し示す。「今、何時か分かってる？ 18歳未満を23時から4時の間に連れ出すのは、青少年健全育成条例に反するからね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1005人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「美少年」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
真澄(プロフ) - みおさん» 大ファンだなんて嬉しいです！これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします！！ (2022年6月10日 16時) (
レス) id: 1390cae94a (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 真澄さん、もう大ファンです！odi et amoといい、もう！作風好きすぎます！涙 (2022年6月7日 18時) (レス) @page37 id: a084972b78 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - あーるさん。コメントありがとうございます。どうか優斗の活躍を見届けてあげてください！今後も感想などお待ちしております！ (2020年10月8日 20時) (レス) id: 4d011ee698 (このIDを非表示/違反報告)
あーる - 初コメです！優斗くん、、、なんでいい子なんだろう涙出そうになりました（ ; ; ） (2020年10月7日 23時) (レス) id: f659d4fa7b (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 乃愛さん。コメントありがとうございます。ここからゆうぴの見せ所になる予定なので、引き続き楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (2020年10月7日 21時) (レス) id: 4d011ee698 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2020年9月12日 11時
