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こんな事をしていても私たちの異変に気がつけば誰かかしらがこちらに様子見に来ると思うし、通報されて終わりだと思う。
が、はたしてその通報と爆弾処理班が間に合うかどうか……。
冷たい汗が背中をつたう。それが気持ち悪くて、拭いたいのに手足を縛られて動けない焦り。
手足が使えないという不自由さは五体満足で日々を過ごしている私としては腹立たしい事この上ない。
さらにこのバカみたいな計画を立てて実行している奴らの人質ときた。頭に銃を突きつけられているというのはストレスというか、疲労が半端ない。
他の人の顔を見れば殺されるかもしれないという焦りからパニックになっているのがよく分かる。みんな一様に顔色が悪い。顔面蒼白とはこういう事なのだろう。
叫び出したりしないのはそうしたら逆に死ぬのが早まるだけだと分かっているから。
子供だったら耐えられない重圧だ。
だからといって大人だから耐えられるとかそういうものでは無いと思うが。
犯人は2人。
さっきペラペラとこの犯行に至った経緯をご丁寧に説明してくれた男と、もう1人。
コイツらが2人で犯行に及んだのかも定かでは無い。まだ仲間がいるかもしれない。そこまでしか、頭が回らない。
そもそも今この瞬間も意識を失いそうなのを必死に堪えているんだ。頭がうまく働くはずがない。
「お前、立て」
『はい?』
「立てっつってんだろうが!!」
足を縛っていた縄が解かれたと思えば、急な怒声に驚いて体が大きく跳ねる。息が詰まって呼吸が荒くなりそうなのを必死に抑える。震える足を叱咤して、男の言う通り立ち上がった。
力を抜けば膝から崩れ落ちそうだ。
「来い」と言われ、男に着いていけば、少しの階段側の廊下を抜けた部屋に背中を強く押され放り込まれる。
少し離れにある人が寄り付きにくい備品室だ。何でこんな所、と考えるもうまく頭が回らない。
「せいぜい爆弾といい余生を過ごすんだな」
男の言葉を理解する間もなく、隣に例の爆弾が入ったカバンを置かれる。足はまた縄で縛り直され、男は私に背を向けて部屋を出ていこうとする。
『まっ、』
「下手に騒げば、時間が経たねぇ間に爆発させてやるからな」
そう冷ややかな目で告られ、バタンと無慈悲にも目の前の扉が閉められた。鍵がかかる無機質な音が、脳を直接揺さぶるように鼓膜に響いた。
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✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時