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『んん?あれ、松田くん私の事フってないかも?』

「かもじゃなくてフってねえんだよ」


思い出そうと思えばいとも容易く、私の中に淡い青春の思い出が蘇る。きっと私は思い出したくなくて、記憶に蓋をしていた。思い出そうともしなかった。
あの時の私には、苦すぎる思い出だったから。

蓋を開けてみれば簡単で、思ったよりも呆気なくて、自分でもそうだったかと首を捻る程だった。

私が思い出したくないと耳を塞いでいる間に、いつしか記憶は少し歪に改変されていたようだ。ずっとフラれたと思い込んでいたけれど、実際は私が返事を拒んだせいで松田くんの気持ちは何ひとつ聞いていなかった。


こんなアホな早とちりを何年もしていたのか。


こういう思い出の改変もあの頃の辛い思い出から逃げる自己防衛だったりするのだろうか。そんなふうに考え込む私を見ながら松田くんが、オレンジジュースをチビチビと飲む。
『お酒飲まないんだ?』と聞けば、「車で来てるからな」とサラッと返事が返ってきた。

へえ。かっけえじゃん松田くん。

とは言え、オレンジジュースを飲んでいるだけなのに様になっている松田くんに恨めしい目を向ければ、「なんだよ」と不機嫌そうに返される。


『いや、そもそもね、それならそうとあの時言ってくれればいい話じゃん?』

「それってなんだよ」


変なところで察しの悪い松田くんに、『いやだから、私の事をさ、その、好き?って』歯切れ悪く伝える。何だこの小っ恥ずかしい会話は。そうとは思うものの自分で始めた話題だ。ここまで来たら引き下がれない。

そこまで言ってようやく私の言いたいことに気付いたらしく、彼は「ああ」とピンと来たように声を漏らしては、飲み干したグラスをコトリと机に置き直した。


「だからそれはお前が返事は要らねぇって言ったからだろうが」

『それはそうだけどね!』


あんなに好きだったのに、何で私はあの時肝心なところで臆病になってしまったのだろう。最後の余計な一言さえなければ、有り得た未来があったかもしれない。例えば私が松田くんと____。


そこまで考えて、思考を振り払うように首を強く横に振る。

違う。そうじゃない。今は別にどうだっていいんだ。もう何年も前の話。どうせ昔の事だ。

だというのに、何でそれならそうと言ってくれなかったんだ。あの時私を引き止めて伝えてくれなかったんだ、って。そんな松田くんを責める気持ちがグルグルと頭を回る。

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時

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