・ ページ27
.
『えっと……』
何だこれ。どういう状況だろうか。
確かに2人きりになるような空間に呼んだのは悪いと思うし、万が一の用心もするべきだと思う。
それでも松田くんだから、そんな事は無いとタカをくくっていた。
いつもと違う雰囲気に言い淀んでいれば、頭の横につかれた松田くんの大きな手が視界の端をかすめる。
何だか昔流行ったやつに似ているシチュエーションだ。なんて言うんだっけ、あれだ。壁ドン。
壁ドンをベッドでしたみたいな。
そういえば床ドンなんてものもあったっけ。じゃあこれは何……?ベッドン……?
脳がフル回転して、そんなどうでいい事すら考えてしまう。少女漫画みたいな、壁ドン……に似たこれはつまり、そういう事なんだろうか。
なんとなく分かってはいても、徐々に先程の松田くんの言葉の心理が浮き彫りになり、途端に顔に熱がこもる。
そんな私を見て松田くんはやっと分かったかとでも言うような視線で、そのまま顔を近づてけきた。
え、ちょ、ま
待たないと言わんばかりに徐々に近づいてくる松田くんの顔に私はきゅっと目を瞑った。
「…………はあ
これに懲りたら他の奴にはこんな事すんなよ」
耳の真横で松田くんが喋ったのかダイレクトに鼓膜に音が響く。吐息が耳にかかり「ひ」と声をもらすが、スプリングが軋む音とともに上にあった気配が無くなる。
恐る恐る目を開けば松田くんはもう私の上から退いていた。相変わらずベッドに腰かけているが。
……え、何この雰囲気。
ゆっくりと体を起こすが一連の出来事によって生み出された気まずい雰囲気のせいで何一つ言葉を発することが許されない。
き、きまず。
どうすれば……とオロオロしていればピーンポーンという軽快な呼び鈴の音がなる。
これ幸い、と勢いよく立ち上がり『ハイッ!!』と返事をして玄関へと早足で歩を進める。
『はーい……』
「よっ」
玄関の扉を開けばニッコニコの笑顔で片手を上げる萩原くんの姿。
え、いやなんで萩原くん?
訳の分からない展開に戸惑っていれば、「いやあ、Aちゃん怒ってるみたいだからさあ〜」とヘラヘラした態度で言われる。
いや、てか……
「んでお前コイツの家知ってんだよ」
私の疑問は後ろから聞こえた声によって代弁された。振り返らなくても分かるが萩原くんの声を聞きつけて出てきた松田くんだろう。
萩原くんと言えば「お、陣平ちゃん、やっぱりここに居たか〜!」と笑う。
何だ何だどういう状況だってばよ。
626人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時