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嫁か彼女か(汐恩) ページ14

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『これは?』

「俺の嫁」

『この子は?』

「俺の嫁」

『わたしは?』

「アヤ」

『俺の嫁って言わんのかい』




ふははは!と豪快に口を開けて笑う汐恩。笑い事じゃないわ。



スマホばっかり見て、なにしてるの〜と近づけば今は忙しいと言われ


やっとスマホを置いたと思えば今度はテレビで溜めてたアニメに夢中。


なんとか構ってもらおうと、映る女の子たちを指差せば嫁、嫁ってさ。



別に、今日は汐恩の久しぶりのオフだし、汐恩もやりたいことはいっぱいあるだろうし

そんな日に家に来た私が悪いと言えば悪いけどさ



ちょーっと、放っておきすぎじゃないか??



まだ会ってから数回しか目あってませんけど。




『ねぇ、いつ終わるの?アニメ』


「溜めてた分全部見るつもりやって」


『…私はどうすればいい?』


「いつも通りおればええやん」




いつも通りってなによ、


久しぶりオフってことは、私に会うのも久しぶりなはずなのに。



これじゃまるで汐恩の家に来た意味が無い。選んだ服もメイクも髪も、無意味で惨めだ。




せっかくオシャレしたのにもったいない。

このまま買い物に行ってやろうかな。汐恩は私がいなくても支障はないはず。




『私帰るね。じゃあね』


「おー。どこ行くん」


『買い物行く。汐恩はゆっくりしてね、ばいばい』


「おい言い方!笑 ちょっと待てって、これ見たらすぐ…」



私が立ち上がって上着を着てカバンを持っても、まだ汐恩は焦る素振りも見せない。話を聞いてるのかどうかも怪しい。


はぁ、私はいてもいなくても変わんないってか。



大きくため息をつけば、その声にびっくりしたのかやっとこちらを向いた。

まんまるな目の、きょとんとした顔。





「……え、なんで帰る準備してんねん」


『帰るってさっきから言ってるじゃん!ほんとに人の話聞いてないよね』


「嘘やん、なんで?待って、送るから」


『いい。』



彼も見ずに玄関まで早足で歩き、靴を履いてさぁ出ようとしたとき


後ろから伸びて来た手がダァン!!と大きく音を立てながらドアに突かれた。




『ひっ…?!びっくりした!』


「マジでごめん、謝る。…行かんとって」


『…何してくれる?』


「かまってやるから、」


『かまってやる( ・ ・ )?』


「…かまわせて、ください」


『よろしい』




次はないからね。


…本当は引き止めてくれたのが嬉しかった、なんて。



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作者名:らん | 作成日時:2021年9月20日 4時

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