【鬼滅の刃】一妻多夫制の柱さん

大事な 参拾 ページ39

Aside


冨岡｢はぁ、は……っ……はｱｯ…!｣


日は傾き、戸からは少し焼けた日光が二人しか居ない部屋に差し込こんでいた。


部屋には苦しそうな義勇の息遣い、私の声だけが響き渡り
それが寂しさを漂わせた。


くるしげな義勇は私に縋りつくように体を委ね、激しく呼吸を乱して滝のように汗を流す。


体を委ねられる際に義勇の逞しい腕に掻き抱かれた私の体は、骨が軋んで痛みを訴えていた。


天元や悲鳴嶼さんのように筋肉があるようにはあまり見えないが義勇も立派な柱。


階級が上なだけあって筋肉はしっかりと付いている。
見た目に合わず、とはこのことだろう。


ゆえに腕力は柱の中で下といえど力が強いことに変わりは無い。
私はその力に耐えながら自分の腕を動かして、なんとか口を開いていた。


｢落ち着いて。ゆっくり、ゆっくり……｣


震える背中をさすり、何度も声をかけるが苦しそうな息遣いが収まる気配は一向に無かった。


その様子に私自身も苦しくなってしまいそうだ…………………。


私が義勇の元に来たのは約三時間ほど前。
ぐずる藤丸を無理やり屋敷に帰らせてから急いでここに来たのだ。


約束した時刻には間に合わなかったが、なんとかすっぽかせずに済んだことに初めは安堵していた。


でもいざ館に訪れてみれば食事が散乱し、汗を大量にかいて気絶している義勇の姿。
それを見た瞬間血の気が引き、頭が真っ白になってしまった。


駆け寄って何度か声をかけてみたが目覚める様子はなく、
眉をひそめたまま唸るばかり。


義勇がこんなに苦しんでるのに、妻の私は何も出来ないのかと自分で言っておきながら悲しくなった。


でもこのままの状態では衛生的にも義勇の身体的にも悪い。


そう思った私は混乱していた頭をなんとか落ち着かせ、片付けに入った。


散乱した食事や皿を片付け、義勇の服を脱がしてかいていた汗を拭く。


恥じらいは無いのかと言われそうだが、飽きる程小さい頃から裸は見てるから「は」の字すらない。


その後に汗を拭いた手拭いを洗濯して干し終わり、義勇の部屋に戻ってきたら過呼吸を起こしてたって訳だ。


｢…………義勇？｣


冨岡｢は、ｧ…っ……はぁｯ…Aっ………！｣


｢………｣


だめだ、なかなか呼吸が整わない。
それほどまでに怖い夢を見たのだろうか。


どうすればいい、助けるには何をすればいい？


早くこの苦しみから義勇を解放してあげたいのに………。
あぁ


｢(何もかも、分からない)｣

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