【鬼滅の刃】一妻多夫制の柱さん

初めての痛み 弐拾捌[水柱過去] ページ36

こんな罪深い男(俺)が生きていていいはずがない。


鬼殺隊の隊服に腕を通す資格もない。
Aさんの涙を拭ってあげられるほど強くもない。


なんで俺が生き残って錆兎は死んだんだ。


分からない、分からない、分かりたくない。


あぁ、なんで……………


冨岡｢錆兎じゃなくてｯ、俺が死ねば良かった……っ…!!｣


涙を袖で必死に拭いながらそう言った時だった。


ﾊﾟｧﾝｯ


冨岡｢ぃ"……ｯ…!｣


突然左頬にやけどした時のようなピリピリとした鈍い痛みを感じた。


あまりに突然だった為に受け身を取ることを忘れ、そのままの体勢で地面に尻もちをつく。


震える手で左頬を触り、目の前に立っているAさんを見上げた。


冨岡｢A……さん？｣


太陽の光で反射して輝くという月はとても綺麗だった。


その月を背にして立つAさんの表情は逆光でよく見えないが、
雰囲気や気配でどんな顔をしているのか、どんな事を思っているのかがなんとなく分かった。


｢義勇、今言った事を早急に取り消しなさい。
もし取り消さないのなら、今度は拳で義勇を殴る｣


Aさんは俺に怒っていた。
暗くてよく見えないから確証はないが、Aさんの目は本気で怒っている時の目をしていたような気がしたのだ。


昔、錆兎と遊んでいる途中体に傷を作ったことがあった。
その時もこっぴどく錆兎と二人で正座して怒られた。


あの時の怒りを含んだ目は怖くて思い出すだけで体が震える。


でも今のAさんの目はあの時以上の怒りを含んだ目をしていると思うのだ。
じゃなければこれほどまでに体は震えないだろう。


この時、俺は初めてAさんに叩かれた。


そして、初めてAさんの事が心の底から怖いと思ったのだ。


冨岡｢ぁ、……ぁ…ｯ……、……ｯ…!｣


｢………｣


恐怖と焦りで上手く口が動かない。


依然、Aさんは俺の返答を待ってるらしく
ただただ俺を見下ろすだけ。


その姿が威圧的で、とても怖かった。


どうしよう
怖い
なんて言えばいいんだ
なぜ俺は怒られているんだ
どうして
分からない＿＿＿＿


色んな感情が俺の頭の中を支配して、ぐちゃぐちゃに混ざりあう。
そのせいで整理がつかず、俺の体は過呼吸にもなりかけた。


｢………そう、それが義勇の答えなんだね。分かった｣


冨岡｢ひｯ……!｣


Aさんの手が俺に向かってきた。


冨岡｢(殴られるｯ……!)｣


俺は迫り来る痛みと衝撃の怖さから咄嗟に目をギュッと瞑った。

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