【鬼滅の刃】一妻多夫制の柱さん

悲しき最終選別 弐拾陸[水柱過去] ページ34

＿＿＿＿＿＿＿＿


名も知らぬ同期に錆兎は死んだと涙ながらに告げられた。


俺は喉が潰れる程叫び、そして泣いた。


周りに同期がいると分かっていても、知っていても
負傷していない右目からは滝のように涙が溢れて止まらなかった。


もうこの世に錆兎はいない。
いくら叫んだって望んだって、一生逢えることはない。


鬼を殆ど倒したのは錆兎だ。
俺は一体の鬼も倒さず助けられただけの人間。


そんな人間が鬼殺隊になっていいのだろうか。
なるべきなのは錆兎だ、錆兎なんだ。


なのになぜ俺は生き残ったんだ。
俺が死ねば良かった…ｯ、俺が死んで錆兎が生きていれば良かったのに……!!


ショックのあまり俺はまた気を失った。
錆兎が死んだという現実から俺は目を逸らしたんだ。


目が覚めてからは色んな手続きを済ませ、先生が待つ狭霧山へとおぼつかない足取りで帰路を歩いた。


冨岡｢(痛い…悲しい…苦しい……)｣


体の痛みは全く気にならなかった。
痛かったのは心だ。


Aさんに、錆兎の姉になんと言えばいいんだ。
あの人は"錆兎命"という言葉がピッタリだった。


少し擦りむいただけで涙を流しては叫んでいた。


『いやｱﾞｱﾞｱﾞ!!錆兎に傷がｱﾞｱﾞｱﾞ!!』


錆兎『姉さん煩い！これぐらい平気だって！』


『駄目です許しません!義勇！捕まえなさい!!』


………それで追いかけ回して、最終的に錆兎が折れて大袈裟な治療してもらってたっけ。


あぁ、ごめんなさいAさん。
あなたの最愛の弟を守れなかった。


俺は罵倒されるだろうか、いや、Aさんはそんな事する人じゃない。
少ししか一緒にいなかった俺にも分かるぐらい簡単な事だ。


だけど


冨岡｢(家族を亡くす辛さは痛いほど分かる。Aさんになんて言えば)｢義勇！｣え……?｣


声のした方に視線を向けると狭霧山へと入る道の入口に、
露出高めな隊服に身を包んだAさんが手を振って俺の名前を呼んだ。


最終選別が終わる日は任務が入っていて来れないと言っていたのになんで…………。


嬉しさと悲しさが混ざりあってドロドロと俺の中で溶けて真っ黒になっていく。
突然の再開に、どうすればいいのか分からなかったのだ。


その場から動けないでいるとAさんは走りながら涙を流し、
俺に抱きつくと号泣しながら労りの言葉をたくさんかけてくれた。


俺はまた泣いた。


自分の情けなさ、包まれた時の安心感、そしてまだ弟の死を知らないAさんの存在に涙したのだ。

ごめんなさい 弐拾漆[水柱過去]→←水柱の苦悩 弐拾伍

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す