いや、ただ偶然出会っただけだけど。【灰谷蘭】

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「ぜってぇに認めねぇ！」


『ん”っ』




ドンッ！と肩を押されて壁に押し付けられ
強引に唇を奪われる。



『い、た……っ！』


ガリッと首筋を強めに噛まれたあと、
鎖骨あたりに吸い付かれる。




『やめて！！』


「…灰谷の何がいいんだよ、あんな“人殺し”」



フラフラと私から離れた優希は
確実にそう呟いた。




『…ひ、ひとごろし？』


「……何？お前まさか知らねーの？

知らずにアイツらとつるんでんの？
騙されてるんじゃね？」



バカにするように笑う優希。




「あの有名な灰狂戦争知らねー？
あいつらさ、喧嘩で人を殴り殺した事あんだよ」


『……、』




それは知らなかった。
彼らからは教えて貰っていない。


あの時竜胆が私に「俺らがどんな奴らかわかってんの」って聞いてきたのは、もしかしてそういう事？




『それでもいい…あの2人、すごく優しくて』


「だーかーらー、騙されてんだって
アイツら顔いいから女なんて手に余るほどいんだろ」


『…バカにしてんの？』




声が震えた。
何も知らないくせになんでそう言い切れるんだろう。


だけど、彼らの事を何も知らないのは
この私も一緒で。



それが悔しくて、悲しいのか怒りから来るものなのか分からないけど、声が震えて視界が歪んだ。




「なんでお前が泣いてんだよ」


『あの2人のこと何も知らないのに
好き勝手言ってんじゃねぇよつってんだよ』



あの2人の影響で、
どうやら私も口が悪くなったみたいだ。





「あたしさー、あの2人と今日約束してんだよね」


こんな状況の中、口を開いたのは“ユイコ”だった。



「バイク、後ろ乗せて貰うんだァ」と
ニヤニヤしてこちらを見ている。


それは果たして本当なのか嘘なのか。




「…なぁA、そんなに灰谷が好き？」


優希が屈んで私と視線を合わせてくる。



『うん…お願いだから、別れてよ…』




するとニヤッと笑った優希はこう言った。





「じゃ、俺と別れるんならアイツらとも縁を切ろ。縁を切りたくないんだったら俺とも別れるんじゃねぇよ

ただし、俺と付き合うって決めたんだったら
あいつらとはもう一切関わるな。

まぁ、どっちにしろあいつらとはもう関わるなよ。」




『……え、』






何その条件。






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