【鬼滅の刃】振り向かせ直しだ。壱【童磨】

１２ ページ13

･


柔らかい笑みを浮かべた蟲柱。

確か名前は……胡蝶しのぶ、だっけ？





「やっと見つけたと思ったら…
また二人の揃った顔を見てしまうなんて。
私は本当についていませんね」



続けて貴方もこの学園にいたんですか、と心底嫌そうな顔をされた。地味に悲しい。





「え？Aちゃん、しのぶちゃんと知り合いなのかい？」



「…え？」





私と胡蝶しのぶを交互に見ると、驚いたように尋ねてきた童磨。その質問に対して胡蝶しのぶもびっくりしている様子。


まぁそりゃそうだ、童磨の記憶から私の存在が欠落してたんだから。






っていうか “しのぶちゃん” 呼びなのかぁ
まぁ、堕姫の事もちゃん付けだし、ね…。




「……」




胡蝶しのぶは一瞬、深刻そうな表情を浮かべたが
すぐに元の笑顔に戻る。


予想だにしなかった出来事に思わず感情が顔に現れたのだろう。



その感情は同情？
私に対してなのか、童磨に対してなのか。





「っていうかしのぶちゃん、さっき “やっと見つけたと思ったら” って言ってたよね？」



「あぁ、そうでした。
先生が貴方の事を呼んでましたよ
私も一緒に呼ばれてるんですけど…」






今にも吐きそうな顔をしながらそう言った胡蝶。

いや顔、顔。
どんだけ嫌なの？





でも童磨は全く動じていない。
鋼のメンタルをお持ちで？





「でもAちゃん、教室の場所…」



『私は大丈夫。
ほら、もうチャイム鳴るし早く行きなよ』






心配そうに私を見つめる童磨。

かっこいい……じゃなくて。





『じゃあね』




心做しか、童磨がしのぶちゃんに私とは違う態度をとってる……というか、なんというか。


考えすぎなのかもしれないけど。





取り敢えずこの場から、この空気から逃れたかった。







するとその時、タイミング良く私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。





「Aちゃーん！謝花さんがAちゃんが道に迷ってるかもしれないから見に行けって言うから来たよ！」






なんだただのパシリか。




確かあれはクラスメイトの男の子…だよね。
私の携帯を取り上げてたやつ。



ってか堕姫は探しに来てくれないのか。






『ありがとう』




私の目の前まで来てくれた男にとりあえずお礼を言って微笑むと、バッ！と目をそらされる。





『照れた？』



「直球すぎる！」





私とクラスメイトの男の子のやり取りを「あらあら……」と笑いながら見つめる胡蝶と無言の童磨。





･

１３→←１１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す