【鬼滅の刃】彼をどうしても振り向かせたい 参【童磨】

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『……、』




飛ばされた深い森。


隣を見上げるとそこには、煌がただ笑みを浮かべ
私を見つめて立っていた。






「ねぇ、今どんな気持ち？」



『……は？』




無邪気に笑みを浮かべ、首を傾げるその様子にはなんの悪意もないように感じる。


でも今の私にとってはその言葉は嫌味でしかない。






「離れちゃったけど大丈夫？」



『大丈夫な、わけないだろ……』






私を見下ろすそいつを睨み付けると「怖い顔！」なんていって笑い出す。


いやこれ、私なめられてるの？






『とうして私頷いてしまったんだろ…ほんと』



「俺は嬉しかったんだけどー」



『……私はもう帰るから。』






煌の顔も見ずにそう言って立ち上がると、
「何処へ？」なんて言って私の後をついてくる。





「君の帰る場所はもう、童磨の所じゃないんだよ」



『あ……』





言われて気がつく。ついいつもの調子で、童磨の寺院に向かおうとしていた。


場所は分かるけど、
行ってしまえば無惨様に怒られるし。




『……あ！！！』



「何！？」



そして、“童磨の寺院” で気がついた。

私は大事な事……いや、大事な物を忘れている。






『童磨に貰った簪が……』




私の部屋に置きっぱなしだ。

まさか無惨様に呼ばれるとは思っていなかったものだから棚の上にに置いたままなのだ。





「えっ、簪貰ったの？
もうそんな仲なの？どういう関係？」



『一度にそんなに聞かないで
ついでに言っておくと私の一方的なものだから』





あぁ、頭から離れないな
童磨が飛ばされる前のあの表情。



“……また、いつか”





童磨は表情を崩さないのに

眉尻を下げて切なそうに笑うその表情の裏に、
どんな気持ちが隠されていたんだろう？



『童磨の考えてる事、分からないな……』





小さく呟けば煌が馬鹿にしたかのように笑った。



「あの人、感情が無いのに」





その言葉を聞いた瞬間、無意識のうちに息をするのを忘れてしまった。




『……なにを。』


「期待なんてしない方が身の為だよ」





期待なんて、そんな図々しい事。
……いや確かに、していたかもしれない。




『自己満足だから』



「……へー」





煌はどうでも良さそうに笑う。


……ほんと、さっきから鼻につく態度ばかり。





『私、その辺ブラブラしてくる
ついてこないでね』


「山だよ？」


『下山すんだよ！！』





･




(離れたばかりなのに)


(もう童磨に会いたい)

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