マフィアのズボンを下げてしまった。【skt】

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目が覚めてから。


坂田さんは吞気に「あ、起きた？」だなんて笑ってるけど、私はそれどころじゃない。なんか手が背中に触れたから、その冷たさで起きたのだ。問題はなぜ坂田さんが私の背中を触っていたかでありまして。


「い、今、何しようとしてました…？」

「その服嫌いやねん。着替えさせようと思って」


問答無用という感じで背中にあるワンピのチャックに手を伸ばす坂田さん。え、待って服脱がせるつもりなの？無理無理無理！！やだやめて怖い。恐怖からか心臓が過労死しそうなくらい働いてどくどくいってる。


「あの自分で着れますから…！」

「あーそっか！起きたんやから色々説明せなあかんなぁ」


坂田さんはぽんと手を打つと、聞き分けよさげに頷いた。自由すぎて、もう完全に彼のペースに巻き込まれてしまった。怖くて怖くて今にも泣き出しそうなのに、坂田さんのいうことは聞かないとなって。

着替えるのは後回しにしてベットに腰掛けると、坂田さんは楽しそうに私の隣についた。


「ここは緑赤(りょくせき)っていうマフィアの第二拠点。俺も住んでるとこやから安心してな」

「ちょ、ちょっと待ってください」


色々と安心できない単語が出てきたので一旦ストップしてもらう。…マフィア。リョクセキ。やっぱりこの人危ない人じゃん！拉致ってる時点で不審者確定ですけど！よりによって、緑赤…。しかもエレベーターで幹部様って呼ばれてたのは私の聞き間違いかな。

緑赤とは、一般人にも名を轟かせている非合法の大型組織。拠点が日本だとかで随分騒ぎになった。しかも最近は紫黄(しおう)というこれまた大きなマフィアと争っているらしく、治安悪化が懸念されていた。

…妙に現実感が沸かない理由もわかった気がする。コンビニ強盗とかならまだ身近かもしれないけど、マフィアなんてドラマか漫画でしか見たことがない。実在するのかも怪しいようなイメージだ。せいぜい名前知ってるだけ。


「緑赤知ってるん？へ〜、なんか嬉しい。あ、それでAちゃんなぁ、実は緑赤のだいじな指輪、どっかやってもうてん」


俺の、ではなく、緑赤の。


微妙な違いに気がついて、呼吸が荒くなっていくのを感じた。

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