【WT】この恋を思い出にしたくなくて【Kr】 (ページ2)

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衝撃が走る。
けれど目をつぶるほど覚悟していた衝撃はなく、なぜか温かさを感じた。
不思議に思い目を開ける。
そこには目を閉じる瞬間に見えた黄色のふわふわした髪の人。

「あの…大丈夫ですか」

ハッとして周りの状況を把握する。
散らかった私の荷物。それよりやばいのが
私が彼を見下ろすような体制になっていること。

『わ！ご、ごめんなさい』

慌てて立ち上がった。
離れると彼の後ろにいたであろう人達の声が耳に入る。

【え、空から女の子じゃ〜ん】
【やんってパズーだったの？！】
【1年？】
【そうじゃない？上履き赤だし】

上履き？そう思い彼の上履きに入っているラインの色を見た。
青色。2年生である。

『あ、え、ほんとにごめんなさい！！先輩を下敷きにするなんて…』

「あぁ、いや、全然大丈夫なんだけど」

「怪我してない？｣

そう言いながら私の顔を覗き込んできた。
ちょっと上目遣いになっていて、眼鏡の間から瞳がこちらを見る。
あ、落ちたかも。

『怪我は全くないです！』
『あの、助けていただいたお礼したいので』
『お名前聞いてもいいですか』

「え、別にいいよお礼とか」

『いえ！下敷きにしてしまいましたし』
『やっぱり何もしないわけには』

ここで終わればきっと話す機会はなくなる。
それが嫌で強引にでも名前を聞こうとする。

【いーじゃん、教えてあげなよ〜】
【お礼してもらっちゃいなよyou】

彼の周りにいる人達がフォローを入れてくれた。すると

「え、ん〜と、きりやんっていいます」

少し照れながら名前を教えてくれた。
きりやん。きりやんって言うんだ。

『きりやん先輩！今度お礼に行きます！』

不意に肩を叩かれる。

《ねえA！！時間やばい！！》

そう言われ時計を見る。
58分。授業が始まるまであと2分しかない。

『え？！やばい！』
『すみません！急ぎます！』
『ありがとうございました！！』

散らかった荷物を拾い上げて走る。
足取りが軽くて、今なら100m走余裕かも。なんて思った。
なんとか授業には間に合ったものの、授業が頭に入ることがないくらい先輩のことで頭がいっぱいだった。