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それから2、3言だけ言葉を交わして

膝丸くんが席を立って出ていってしまった。


止める資格も、気力もない。
今の会話の記憶もない。

少しだけ目線を上げると
膝丸くんの飲みかけのコーヒーが目に入った。


『お店の人に悪いから』と言って
どれだけお腹いっぱいでも出された食事は全て食べる膝丸くんが

コーヒーとはいえ出されたものを残して立ち去るだなんて

それほどもう私と居たくないんだと思うと
胸がきゅう、と締め付けられた。
その聞こえないはずの音さえ聞こえた。





A「……おなかいたい」




お腹に手を当てて、また下を向く。

吐き気もするし、熱っぽい。

辛い。

薬飲んじゃおうかな。


でも、何も悪くないのに……

でもそれじゃあ、彼を困らせてしまう……


それでも、自分だけの力でどうにかするのを決めるのは
今しかできないから……


ごめんなさい、ごめんなさい、私が悪いの、全部。


体調のせいか、彼氏と別れたせいか
それとも全部か
一気に波がおしよせてきて
目の前が滲んで、ぎゅっと瞼を閉じる。





A「泣いちゃだめ、ないちゃだめ、こんなところで……」




周りには、今の私はどう写っているんだろう。

別段大きな声で会話してたわけでもなく
なんなら普通より小さい声だったはずだ。

普通のカップルの別れ話なんて内容はそこまで聞こえないはずだが

いかんせん膝丸くんは顔が良すぎるので
黙っていても注目を浴びる。
集中して見られていれば話くらい聞き耳立てられているに決まっているんだ。


他人事のように『気の毒に』だなんて思われてたらいい。

同情なんてされたくないけど。


あぁ、いいな、自分の事じゃなくて
周りのことを考えたらだいぶ楽になってきた。

涙も引いた。

帰ろう。

早く帰って、お風呂に入って……

薬飲むかは、その時に考えよう。



がたっ、



私が立ち上がるためにテーブルに手をかけたのと同時くらいに

膝丸くんがさっきまで座っていた側の椅子が動かされた音がして
『戻ってきた?』だとか淡い期待を抱きながら
そろり、と顔を上げた。





「大丈夫?1人なの?」





期待も虚しく、というのは失礼だけど
目の前にいたのは
先程別れたばかりの彼ではなく

ふわふわとクリーム色の髪をして
同じつり目なはずなのに
人懐っこそうな顔をした

彼が愛してやまない
彼のお兄さんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。

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美葵 - 面白かったです!更新楽しみにしてます! (2022年12月13日 20時) (レス) id: 1084734db6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すっごくドキドキしながら見てます…!! 続き楽しみにしてます! (2022年12月6日 10時) (レス) @page11 id: be844da8b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こまめ | 作成日時:2019年12月25日 0時

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