無神論者の私には検討もつかないけど。 ページ1
「Giudizio Universale…」
つるりとした冷たい木の感触。
薄暗い一室に充満した花の香り。
濁った世界で見えるのは十字架を背負った木製の棺桶だ。
五感で感じる死の現実は、予想していたものより随分とあっさりと突きつけられる。
綺麗なままでエンバーミングされているのにも悪意しか感じない。
審判を降すのは白い悪魔ではないはずなのに。
エンバーミングは二ヶ月ももちはしない。
遺体すら見つからなかった赤ん坊よりはましなのか。
灯せもしない赤いリングと緑のリングを握りしめる。
地獄だろうか、天国だろうか、それとも私のように第二の人生が始まるのだろうか。
少なくとも赤ん坊のほうは天国には行けやしないだろう。
…一応、私には優しかったんだけどなぁ。
二つのリングのうち赤のリングを"父"の手に握らせて、緑のリングを敷き詰められた花の上に乗せる。
左手の薬指にあるリングの跡を見つめてグッと眉間にシワを寄せた。
この年になってなんて親不孝ものなのだろうか、自分は。
前世では親より先に死んだのに、今度は自分のせいで死なせてしまうのか。
沸き上がる怒りと悲しみをなんとか押さえつけて、もう一つが無事であることを心底願う。
何もなくなった手を白衣のポケットに突っ込んで取り出したのは、真っ黒な匣だ。
ただの保存用の匣に見えるそれは、実は私の炎でしか開かない特殊な作りになっている。
この陰湿な作りは陰湿な赤ん坊のほうの作品だろう。
中身を残してくれた父は、こんな特殊な作りの匣を用意する時間は無かったはずだから。
この中身と匣本体には二人の研究者としての人生がつまっている。
この技術を残した人間を、キリストとやらはどう扱うのだろうか。
無神論者の私には検討もつかないけど。
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まぶぴちょこ(プロフ) - すっごく面白い話で、惹き込まれる作品でした！もう完結なのでしょうか…？どちらにせよ素敵な作品をありがとうございました！ (2022年2月25日 22時) (
レス) @page8 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
地味って便利 - めっちゃおもしろいです！楽しみにしてます！ (2020年1月2日 16時) (レス) id: 3582ac3c0b (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 紫苑さん» お返事遅くなって申し訳ありません！ありがとうございます！頑張ります！！ (2019年10月28日 0時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 更新楽しみにしてました！頑張って下さい！！ (2019年10月8日 16時) (レス) id: 14ab16d7c2 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カリンさん» お待たせしました！待っていてくださりありがとうございます。頑張りますのでどうぞお楽しみに！ (2019年10月7日 19時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年10月5日 22時
