知らないふりすらできやしない。 ページ36
イタリアから来たというわりにはお箸の扱いが堪能だよね。
お弁当からつままれた卵焼きが、彼の口に消えていくのをなんとなしに見ていると、それを飲み込んだ六道君の視線がこちらに向く。
「心配しなくても美味しいですよ」
「え？…あぁ、うん、ありがと」
思いの外簡単にお弁当を受け取ってくれる六道君とのお昼の時間は、週一ぐらいのペースで二人きりに持ち込まれる。
場所は空き教室だったり屋上だったりとまちまちだ。
いつの間にか鳴き出した蝉を探すように窓の方へと顔を向ける。
「もう夏がきますね」
「うん」
着崩されてはいるものの、譲れないスタイルがあるのかしっかりと腕を通された学ランの六道君からは、涼しげな印象しか持てないけれど。
どこか機嫌のよさそうな彼を横目に、先日ヴェルデさんから送られてきた古びたフロッピーディスクを思い出す。
はっきり言って恭弥君との再開で思考が変なところに行きかけていたので、現実に戻すヴェルデさんからの贈り物はありがたかった。
今もチカチカと律儀にも受信を知らせてくれる携帯を軽く黙殺する。
クフフと微かに笑う声が聞こえて、発した本人を見た。
「今日はよく働く携帯ですね」
「…いつもはあんまりって言いたいのかな？」
「いいえ？ただ純粋に相手が気になるだけですよ」
…あぁ、もういいよ。
お腹いっぱいだ。
ここ数日で負担というよりも確実にダメージを負っている繊細な部分が、胸焼けしたように気持ち悪くなる。
彼のリクエストで甘めに作っておいた卵焼きには手をつけず、ピーマンの炒め物を口に含んだ。
「…友達だよ」
「ほぅ？」
もうこの話題は終わり、という風に気持ち荒くお弁当箱を閉めた。
「その言葉を信じるとしても、女性は人の秘密よりも自己の秘密はよく守りますね」
「…不誠実だといいたい？」
「いいえ、君に知られるなら本望です。その代わり僕にも反則技を使う権利がありますが」
「…男性は、自己の秘密よりも他人の秘密の方を誠実に守るんじゃなかったっけ」
「生憎君と同じでモラリストには反抗したいたちのようで」
肩を竦める六道君に嫌になる。
「六道輪廻を、巡ったから…？」
「それもありますが、単純にジャン・ド・ラ・ブリュイエールは好きではありません」
恭弥君も六道君も…私も、独自ツールが強すぎて隠し事ができないな。
知らないふりすらできやしない。
この夏は、なにかが始まる予感がするね。→←忍耐強く待っていたんだよ枯れない愛で。
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
