似た記憶を所有する人が近くに居ることすらも、私は知らない。 ページ12
まだ朝日も見えない明け方。
蒸し暑さを感じて目が覚めると、二度寝する気にもならずシャワーを浴びてフラフラと書庫になっている一室に入る。
五年前まで暮らしていた家にあった蔵書と、あれからさらに増えた本を綺麗に収納しておくにはこの一室を丸々使うしかなかったので、父の書斎はまた別にあったりする。
ちなみに私がよく出入りする部屋のひとつである地下は、なるべく紙の類は置かないようにしている。
…燃えたら困るし。
微かに覚えている夢を思い返して、手に取った本はこの五年間私が個人的に研究している人間の記憶についての本。
そしてそれを含めた『生まれ変わり事例』の研究書類だ。
刷りきれるほど読み込んだそれを流し見て、息をつく。
私はこの世界に生きている。
けれど、薄れる記憶に不安を感じるのも確かなのだ。
きっとこの世界に生きている限り付きまとうその不安に、押し潰されるほど軟弱な精神ではない。
恭弥君に出会っていなかったら…とは思うけれど、あれは勝手に私が彼に掬い上げられたと思っているだけで、そんな理由で彼に執着するなんてことはしたくなかった。
だからこそ、『生まれ変わり事例』を何度も研究した。
同じ境遇にいる人はいないのか、過去にいたことはないのか。
周りに異様だと思われない程度に、独りで、ひっそりと。
まぁ、たった五年で解ったことなんて、私と同じ境遇の人はいない、というなんとも情けない結果だけだが。
自嘲的に漏れた笑みを切り替えるように口の端をつり上げる。
最も期待なんてしていない。
ただの私の趣味みたいなものだ。
そんなものより今は父の所属する研究チームの研究が最優先で、私も興味をそそられるようなファンタジーな内容なのだ。
窓から差し込む朝日を見て、鬱々とした気持ちを振り払うように髪をかきあげる。
女が気分を上げる方法はオシャレすることに限る。
これから学校なので髪型ぐらいしかできないけど。
登校すると当たり前のように凝った髪型を誉めてくれる六道君に苦笑いを返す。
昨日のデートは楽しかったですよ、なんて言う彼にちょっとお茶しただけでしょ、なんて鼻で笑って…ほら私はこんなにも強く生きてる。
だから大丈夫なんだよ、と夢の中のぼやけた家族へ。
似た記憶を所有する人が近くに居ることすらも、私は知らない。
異国の王子様はスマート過ぎる。→←意地を張る女の扱い方を心得ているよね。
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
