◇壱 ページ5
*
初めて、私はこうして現代を歩く。
家にいた頃は、あまり外に出なかったからとても新鮮だ。
しかし、都会は目が回るなぁ……。
立ち並ぶ大きなビル、ごちゃつく街を走るたくさんの電車、
様々な格好をした人々、大音量で広告を流しながら走るトラック。目に映る全てが初めての経験だ。
「ちょっと、そこのお姉さん」
『………………………』
「聞こえてる?…あ、そうそうあなた」
同じような青っぽい服を着た数名の男性が声を掛けてきた。
胸元には、POLICE と書かれていた。
……あぁ、警察官か。
『何の御用でしょうか?』
「君ねぇ、その背中に背負ってる物は何かな?」
『?何って、刀ですけど』
怖い顔をした男性が指さしたのは、私の愛刀だった。
「刀ですけど、じゃないんだよね。君とぼけてるつもり?もう武士の時代は終わってるの習わなかったのかな?」
『とぼけてる、とは失礼ですね。何なんですか。私は引越しの最中でして忙しいのですよ』
私の手を掴む警官の腕を振りほどいて歩き出せば、
今度は私の首根っこを掴んで引っ張られる。
「はいはい逃げなーい。銃刀法違反だよ、君。」
『……はい?私が銃刀法違反ですって?』
「とぼけても無駄ー。署まで同行ね。君名前は?」
『……羽衣石Aですけど…』
私が諦めたようにそう言えば、
彼らの顔はみるみる真っ青になっていく。
「……羽衣石だ…おいマジかよ…」
「…も、もう帰っていいよ」
『……そうですか。では失礼致します』
彼らが顔を青くした理由、それは羽衣石家は特別に
刀を所持することを政府に許されているから。
そして、羽衣石家の人間が刀を持っていることを咎めた者は
跡形もなく署から消し去られてしまう噂があるから。
『全く、災難だったなぁ…もう業者さん来ちゃってるかな…』
洋服を着た人々の中に、ひとり深紅色の和服を着た女が
近代的で都会的なビルの海に消えていった。
490人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あう - 1、本科と写しどれも個別の刀で追いめを感じる様な者ではないから。実際に国広は誇りを持っている。2、剣士と言うだけで刀の事はあまり知らなかった。3、日輪刀は十人十色の刀だから ※勝手な妄想です。気にしないでくれるとありがたいです (11月21日 23時) (レス) @page6 id: 64c26850b0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音 - 本当に面白いです!続きがめっちゃ気になります!頑張ってください! (10月28日 9時) (レス) @page38 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
榮薇(プロフ) - たまごがゆさん» 夢主ちゃんは、山姥切の言動に、自分が写しであることに負い目を感じていることを察して、わざと知らないふりをしている、という設定です!ご指摘ありがとうございます😊ありがとうございます😳これからもご愛読いただければ幸いです❤️ (2022年8月29日 9時) (レス) @page8 id: c8e9ae4c59 (このIDを非表示/違反報告)
たまごがゆ - 素敵な話で読み込んでしまいました! ところで質問なんですが、◇参 の羽衣石が写しや本科を知らないのは何故ですか?刀を持つ鬼殺隊士が知らないとは思えず… 更新頑張ってください!応援してます! (2022年8月26日 22時) (レス) @page8 id: 8c08499bcc (このIDを非表示/違反報告)
榮薇(プロフ) - ふわなさん» わぁ!ありがとうございます嬉しすぎます🤭❤️ (2022年8月19日 21時) (レス) id: c8e9ae4c59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:榮薇 | 作成日時:2022年8月1日 21時