ケージ:127 ページ31
「っ！」
転ばないように咄嗟に足を捻った。ぐらりと傾ぐ体を支えようと、足首一点に力がのし掛かる。
鈍い痛みが走って顔をしかめた。
しかし、そんなことを気にかけているような暇は与えられない。
覆い被さるように私に重なる影に、ばっと顔を上げる。私を見下ろすエーミール先生の表情は読めない。
急いで体勢を立て直そうとするけれど、腰が抜けてしまったのか力が入らなかった。だめだ。逃げられない。
「う、うう。」
そのまま壁を背にみっともなく床にへたり込む私に、もう一度エーミール先生の手が伸びる。
「ひ、っ！」
ひたり、と首に手がかかった。
優しく添えるような手つき。
冷たい。
力なんて籠っていないのに、どうしてかその手が今すぐにでも私を殺そうと肌に爪を立てる所を想像してしまう。
溜まっていた涙がぼろりと溢れて小さく喉が鳴った。
「何に対しての謝罪でしょう。」
「へ、」
「何に対しての謝罪でしょう。」
「ご、ごめんなさ、」
「何に対しての謝罪でしょう。」
壊れたロボットのようにエーミール先生が繰り返す。表情は変わらない。ただほんの少し、首に添えられた手に力がこもった。
潰すようにエーミール先生の親指がくっと喉元を押し込む。
「……ひあ、っご、ごめんなさい、黙って、黙っててごめんなさい……！」
弾かれたように一気に捲し立てる。もうパニックだった。
こんな状況になってしまった原因も。
エーミール先生が私をわざわざこんなところに連れてきて蝶の標本を見せた理由も。
そもそも、どうしてエーミール先生が手紙を持っているのか、ということも。
もう考えている余裕なんて無かった。ひたすら、今はエーミール先生から逃げ出したかった。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (
レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…！ (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります！ (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです！！とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です！！！！すき！！！！ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです！？！？！？！描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年2月26日 20時
