ケージ:123 ページ27
また扉を開く。今度は随分と分厚い。
進めば進むほどだんだんと暗くなるものだから不安になって、どこへ行くんですか?と尋ねた。
「ふふ。とっておきの場所です。」
「……。」
楽しそうな声音。怖い、なんて水を差すようでとても言えない。
ほとんどぴったりエーミール先生の後をついていくような形で私は歩いていた。
「着きましたよ、……おや。」
「あっ、ご、ごめんなさい。」
またしばらく歩いて、ようやく一つの扉の前でエーミール先生は立ち止まった。
怖い、怖いの一心だった私はすぐには反応できずに、エーミール先生のすぐ後ろにくっついたままで肩を揺らす。
そんな私を叱ることはせず、彼はふふ、と柔和に笑って口元を押さえた。
「怖かったですか?」
「いっ、いえその、違うんです。ただ、暗くて……。」
見失ってしまいそうで、だのなんだのと言い訳を並べてみるけれどきっとこれも見透かされているのだろう。
配慮が足りませんでしたね、とまなじりを下げてエーミール先生はそっと私の頭を撫でた。
同時に謝罪の言葉が落とされる。
柔らかなその声に、エーミール先生といると私は彼を謝らせてばかりだ、なんて自分を不甲斐なく思った。
「もう大丈夫。着きましたから。
……さ、ここです。とっておきですよ。」
グルッペンさんにだって見せたことないんですから、と笑ってエーミール先生はゆっくりと扉を開けた。
ギギ、と音を立てて分厚い扉が開く。そっと促すように、背中に手が回される。
中は真っ暗だ。なにも見えない。
エーミール先生、と袖口を握った手が僅かに震えたのを、彼は気づいただろうか。
「……ああすみません、今明かりをつけます。」
エーミール先生が懐から何かを取り出す。シュッと何かが擦れるような音と共に、炎が暗闇に踊った。
蝋燭立てにそっとその橙を灯すと、エーミール先生が扉を閉める。ギギ、と重たい音がして蝋燭以外の一切の光が遮断された。
_____そうして、私はエーミール先生が得意気に照らした部屋の中の光景に、言葉を失った。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…! (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります! (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです!!とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です!!!!すき!!!! (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです!?!?!?!描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね!! (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくわ | 作成日時:2020年2月26日 20時