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「俺な、」
ぽつり、と福本先輩が話し出した。
国立の大学、狙っとんねん。経済やりたくてな。私立やないからそこまでお金かからん言うても多少はやっぱかかるやろ？わからんけど。そんでな、俺妹だけやなくて下に兄弟結構おんねん。親に迷惑かけたなくて、俺がこの店頑張らんと、おとんおかんには今だけでも楽させな、って気ぃ張ってたら、いつの間にか皆にも頼れんくなっとったわ。
聞けば1人で片付けした後も、先輩は夜中の1時2時あたりまで勉強していたらしい。
「だから今日、Aちゃん来てくれて良かったわ。人なんか1人で生きていけんもんな、忘れとったわほんま！」
ありがとう！！とすっごく素敵な笑顔で福本先輩が言う。
「無理しないで、今日は早く寝てくださいね？」
「おん、わかった！まっさか後輩に心配されるなんてなあー」
頭をがしがし掻きながら笑う福本先輩。なんかすっごい楽しそう。よかった。
「ほんまに送らんくてええの？」
「それより福本先輩には休んで欲しいので。私は大丈夫ですよ、電車も1本ですし」
先輩を安心させるべく、ちょっと微笑むと福本先輩は顔をほんのり赤らめた。あんまし女子の免疫ない人なのかな？
「なあ、」
帰ろうとしていた時に思いのほか近いところで声が聞こえたのでびっくりして振り向く。
「大晴って、呼んでや」
福本先輩は距離感じるねん、嫌。とひとつ上には到底思えない可愛さでぷう、と頬を膨らませている先輩。
「...たいせー、せんぱい？」
さすがにちょっと抵抗と気恥しさが勝り、舌が回りきらない幼稚園児みたいな発音になってしまった。恥ずかしくて下を向いてしまう。
「...やば、」
「先輩なにか言いました...？」
「なんもー、」
やっぱ送らせてやー、なんてちょっとわがままな大晴先輩。休んで欲しいのに。
駅でいいって言ったのに食い下がらない大晴先輩に負けて、しっかり家の前まで送られてしまった。
「じゃまた、明日な。最終日もがんばろーや、おやすみ！」
おやすみなさい、と返すと軽く手を振ってすぐに駅へと走っていった大晴先輩。家に入るまで家の前にいた正門先輩とは違う。
...また正門先輩だ。
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作者名：紗々 | 作成日時：2020年5月21日 10時
