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「ショパンもいいね。でもなんで？」
「そういうロマンチックな曲好きそうだから。」
「確かに好きだな。幻想曲はわりとお気に入りなんだ。」
微笑みながら彼は前回と同じようにAの正面に座った。
近すぎず、遠すぎず、ちょうどいい位置を彼は陣取る。
「お兄さん乱読家でしょ。あんまりジャンルに頓着しない人だね。」
「あぁそれはあるな。ジャンルとか、関係なく大きな括りで見てるから。」
お兄さんはそう頷くと公園の時計をちらっと横目で確認した。
Aがこの後何かあるのかと聞くと、一瞬考えるような素振りをしてから首を振る。
「いや、今日は子供たちもいないし、よかったらこの後お茶でもどうかなって思って。」
「…いいですよ。私もお兄さんとはお話したいし。」
「よかった。また断られるかと思って実は緊張しててさ。そう言って貰えて嬉しいよ。」
こんなナンパの常套句をまさか自分に言われる時が来るなんて、とAは少し照れたようにはにかむ。
この短時間だが、Aは彼の人となりがなんとなく掴めた気がした。
オーラを見る限り、気さくなふうに見えるがきっと内面は気難しい人なんだと思う。
この変わったお兄さんのことを、もう少し知りたい。
得体の知れないこの人を。
「ではリクエスト賜った『白鳥』を心を込めて演奏させていただきますね。」
照れを隠すようにAは芝居がかった物言いでチェロを持ち直した。
弓を構えると、お兄さんはすぅっと目を細めた。
Aはそれを視界の端で捉えながら息を大きく吸った。
弓が弦を滑り、振動する。
この『白鳥』は高校入試の実技試験の課題曲であった。
「(懐かしいなぁ…)」
一度完成させた曲は忘れることはない。
Aは暗譜においての記憶力は誰にも負けないという自負を持っている。
左手でビブラートをつけながら旋律をひとつずつ辿っていく。
白鳥が優雅に泳ぐ、今日のような天気のいい昼下がりの湖を思い浮かべる。
こうして弾いている今だけは、この曲は私だけのものだ。
弦を撫でるように最後の音符を伸ばす。
Aは弓をそのまま高く上げて弾ききった。
それから一呼吸おいてパチパチパチ、とお兄さんの拍手が耳に入った。
「…やっぱり、生で聞くのは違うな。」
独り言のようにお兄さんは呟く。
その彼の黒い瞳が少しだけ煌めいているのを、Aは嬉しく思った。
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます！私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (
レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね！私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです！とっても素敵ですよね。応援しています！ (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑！更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして！団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました！出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください！ (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます！そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽへみあん | 作成日時：2019年7月21日 0時
