ニコラシカ - 北信介 ページ13
「急に飲みに行きたいとか、どないしたん？」
「…ちょっと、そういう気分で」
そうなん、と呟くと、彼氏である北さんはいつもの通り優しく微笑んだ。
「まぁ、そんな時もあるわな」
「…そう、ですね」
(……この笑顔も見納めかぁ)
今日北さんを飲みに誘ったのは、本当はただ飲みたいからっていうだけじゃない。
タイミングはまだ迷ってるけど、ひとつ、伝えないといけないことがある。
「A、なに飲むん？」
「え？……あ、えっと…ニコラシカ、ですかね」
「へぇ…相変わらずアルコール強いなぁ」
(そういえば、最初に飲みに行った時も、私のザルさ加減に心配されちゃったっけ)
そう昔のことじゃないのに、なんだかとっても懐かしく感じる。
「…A」
「！…はい？」
気づくと、北さんは私の顔をまじまじと見つめていた。
「なんですか？」
「…A、俺に言いたいことあるんやないん？」
「…え」
(……なんで…)
知ってたのかな、とも思ったけど、北さんは本当になにも知らなそうで。
「…なんでわかるんですか？」
「彼氏やもん」
「っ……」
大好きな柔らかい笑顔に、思わず涙腺が緩む。
(……北さんには隠し事はできないなぁ…)
改めてそう思い直し、私は思い切って、北さんに打ち明けることにした。
「…実は、その 来月から…海外出張があるんです」
伝えないといけないこととは、この話。
先々月に、上司から持ちかけられた話だ。
「うん」
「……3ヶ月間で その間、北さんに会えないことを考えると…行くかどうか迷ったんですけど…」
「うん」
「……行く、ことに しました」
(……なんて言うだろう。
もうちょっと相談してほしかったとか、怒られるかな)
相談しなかったのは事実。
怒られてもなにを言われても、文句なんか言えない＿＿
「ええやん、海外出張」
「……え？」
思わぬ返答に顔を上げると、北さんはニコニコと私のほうを見つめていた。
「……怒らないんですか…？」
「なんで怒るん？むしろ俺を理由に出張断らんかったとこ、偉いと思うで」
北さんはいつも優しくて、私より大人だ。
私がどうしようどうしようって悩んでたのがバカみたいに。
「待っとくから頑張ってき」
「っ……」
今日いちばんの優しい微笑みに、堪えていた涙が溢れた。
「あと、帰ってきたらいい加減下の名前で呼んでほしいわ」
「っそ、それくらいなら今すぐでもできますよ」
「ほんまに？(笑)」
ニコラシカ
カクテル言葉【決心】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 532人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
李玖(プロフ) - カクテル言葉なんてあるんですね、初耳でした！やっぱ二口しか勝たん！！！ (2021年4月26日 21時) (
レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
凛々 - カクテル言葉ってカックイーですね！ 私は西谷さんも良いけどツッキーが一番好きです。(リエーフとかも見てみたい)長文すみません。面白かったです！頑張ってください！ (2019年8月21日 21時) (レス) id: df09ac0ca3 (このIDを非表示/違反報告)
闇黒星(プロフ) - ○○言葉みたいなのを知ってる人ってなんかあこがれますね！面白いです！これからも頑張ってください！ (2019年8月11日 19時) (レス) id: be843ec937 (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - 引きこもり桜花さん» ありがとうございます!面白いという感想がほんとうにうれしいです。激励のお言葉も頂きまして本当に感謝です! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)
は お(プロフ) - アンズさん» そう言っていただけて嬉しいです泣 新しいやつも終わるときに惜しまれるようなクオリティを目指して頑張りますので、もしよろしければ今後も応援していただけるとうれしいです、、! (2019年8月10日 0時) (レス) id: 80e348f75a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：は お
| 作成日時：2019年7月25日 10時
