へろーまいえんじぇる【2j3j】

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「ほら、ベッド出したから

好きな時に寝てくれよ」


「あ、ありがとうございます」


「……おやすみ

ごめんな、勝手に巻き込んで」


別にそんなつもりじゃないのにな

申し訳なさそうに階段を上る吸血鬼に同情の気持ちも生まれた

まぁそりゃそうか

僕はヴァンパイアハンターで、彼女は本来処刑対象

こちらを警戒するしこちらも警戒すべきなのだ


でも彼女には、一切その気がわかない

吸血鬼に家族を殺されてから、一匹残らず捻り潰してやろうと思っていた吸血鬼がこんなにも穏やかに見えるなんて

こんなにも穏やかに食卓を囲めるなんて

興味を掻き立てるなんて

こんなにも楽しくなるなんて、思ってもみなかった


「バカか僕は」


「馬鹿だからここにいるんじゃないの？」


上を見ると、月明かりで照らされ、陰っている僕の顔が吸血鬼の瞳にはっきりと映し出される


「剣持少年は本当に馬鹿だねぇ

私だって吸血鬼だぞ？」


彼女の赤い目が燃えるように光っている

この反応を僕らヴァンパイアハンターは知っている


極限の空腹状態

つまり、血が足りてない状態


「……お腹がすいたんですね」


「そうだよ、だからごめんけど早く帰ってくれないか」


そんな気一切ないくせに

そう言うと、否定するために首を大きく横に何度も振る


彼女の手は僕の首にかかっている

いつでもお前を食える、普通ならそんな状況

でも彼女は抗っている

不思議だ、ここまで極限の状態になるまでよくこんな血の着いた動物が溢れる家に住めたものだ

今までにもたくさん空腹の状況になることはあっただろうに

今日は満月じゃないし、油断していたんだろうか

彼女は意外と詰めが甘い


「……おい、聞いてんのか剣持少年

いいから早く振りほどいて」


「吸ってもいいですよ？」


「…………？

は？」


吸血鬼は目を見開いて動揺の色を見せた


「剣持少年、ふざけてるなら本当にやめた方がいい」


「別にふざけてませんよ

……って、吸うなら早くしてくださいよ

こっちだって恥ずかしいんですから」




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