お前さ ページ31
「…お前さ」
突然口を開いて喋り出した宇髄さん、
に、それまで数秒その顔を困惑の思いで見つめていた私は、一瞬ドキッと心臓が止まる。
ビックリした…!ガン見してたのに唐突に喋らないで…!?
心の中でそう叫んで……何とか動揺が顔に出るのを抑えながら、私は宇髄さんの言葉を待つ。
この状況で一体何を聞こうと……いやというか、私が倒れた後、宇髄さん自分から「俺が運ぶ」って言ったのか…?
「俺の指噛んでんの気付いてんの?」
「え」
そして放たれた一言に、何を言われたのか分からず数秒固まる。
何となく頭で理解しながら、何言ってんだろうと、
そこで初めて、視線を下げて、宇髄さんの顔から視線を逸した。
「…う…?」
___そして、自分の口の中に、人の指が含まれていることに気付いた。
これ、親指だ………宇髄さんの。宇髄さんの左手……???
「うぇっばっ、何で!?!」
「!おまッ」
咄嗟にぼーっとしてた意識が目覚めて、
大慌てで左手を引き剥がし宇髄さんから退こうと思いきりじたばたし……結果、床に落ちる。
いやいやいや、え??何で噛んでの私?宇髄さんの指噛んでたの!?
全然気付かなかったし感じなかったし……それずっと見てたってことかなあの人!!
「う、うわ……柱相手に何してんの…」
縁側に両手両膝を着いて蹲りながら、ふと本人は無事なのか気になって、振り向く。
「気付かずしゃぶってたのかよ。派手に鈍感だな」
「ゔっ……地味に見てた人に言われたくない…!」
確かに思いっきり第一関節まで噛んでいて言うのもアレだけど、正直言われるまで全然違和感なかったから……仕方が無い、と思う。
「……お前、腹空いてんのか?」
「え…?腹……て、ご飯食べたし…」
「ちげぇよ、そうじゃなくて。鬼の主食は……人間だろ。人、食べてんかって」
真っ直ぐに私を見つめる、見定めるかのような目………
そう聞かれて、私は思わず口籠る。
だって、その質問の答えは…………多分、誰もが内心知りたがっていたその答えは、私にも分からない。
私はいつから鬼だったのか、記憶がない理由もその内容も何なのか……過去に誰かしら食ったのか。
分からないから、もしかしたらもう私は人を食べたことがあるかもしれない。
___でも、仮に。私が今みたいに“理性”を持った鬼だったとしたら、
「___食べてない。人を食べなくても、別に、生きていけるから」
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楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時